嫌よ嫌よも(武人×旅人)
「・・・俺ってなにも考えてないかなぁ。」

突然フラっとバッツがガブラスを訪ねてくるのは何時も通りの事。その後がおかしかった。大騒ぎするわけでもなく寝台に座って読書をしているガブラスの隣に座りぼんやりとしていた。ぼんやりし続けやっと発した言葉がそれだった。

「能天気そうに見えて仲間の事とか考えてるだろ?」
「ガブラスの事も考えてるよ。」

はいはいっと流しても何時ものような軽口はこない。それどころからしくもない溜め息までつく始末。このまま秩序側に帰そうものならガブラスのせいではなくとも魔人の弟にどんなお小言を言われるかわかったもんじゃない。溜め息をつきたいのは自分の方だとガブラスが肩をすくめて横目でチラリと見れば、似合わない暗い表情が伺える。

「誰に言われた?」
「あるてぃみしあ。」
「あんな魔女の言う事なんて気にするな。」
「・・・毎回言われたら気にするし。」

読んでいた本を端に置き身体をずらし自分よりも細身なバッツを抱き締めてやれば甘えるように身体を預けてくる。秩序の者達のように優しい言葉をかけてやれる性格でもないのでこうするぐらいしか出来ない。

「今日のガブラスは優しい。」
「普段、五月蝿い奴が珍しく落ち込んでるからな。」

ガブラスが背中を撫でてやればバッツは気を良くしたのかぎゅっと服を掴み身体を寄せる。

「ノアが好きだぁ。なぁチューしてよ!」
「何故そうなる・・・。」

バッツがしたものよりも深い溜め息をし額に触れるだけのキスをしてやれば、先程の暗い顔が嘘のようなまんべんの笑顔を浮かべた。
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