君と共に・・・(武人と勇者)
後ろを振り向かずともわかる気配が近付いてくる。
(誰よりも強い光の力・・・また光の戦士か・・・。)
背後から奇襲をかけてくるような卑怯な人間でないとわかっていても腰に下げた愛用の剣に手をかける。
「止まれ。そんなに光を巻き散らかしてそれ以上近くにくるな。」
「こんな暗い場所にいるからそう感じるのだろう。」
「・・・何の用だ?」
言葉に従い光の戦士はあと数歩の距離で立ち止まった。
光の戦士の様子から相手に敵意がないのはわかったがガブラスは何時でも武器が抜けるような体勢をとり続けた。
「貴殿の中に光があるのに何故それを拒む。」
「勇者様にしては面白い冗談を言う。」
真っ直ぐ射ぬくような力強い視線をこちらに送っているのが背を向けたままでもわかる。
「私には貴殿がそちら側に居続ける理由がわからないのだ。」
「わからないならそれでいいではないか。」
「私は君を共に闘える仲間になってくれると思っている。」
「想いも夢も全ては失われていくもの。期待するだけ虚しいだけだ。」
どれだけ否定しようと彼はやってくる。
時折訪ねて来て何度も同じやり取りを重ねる。
もう何回目かわからなくなるぐらいだ。
「共に行こう。」
「私には貴様の光は眩しすぎる。去れ。」
そしてどれだけ否定されようとガブラスを光の当たる場所に連れて行こうとする。

「ガブラス・・・私は貴殿と共に・・・。」
強い意思を込めた言葉を言う青年の言葉とは思えない程の発言だった。
これまでそんな事は言わなかっただけに驚いて振り向けば、言われた通り本来の居場所である聖域に帰っていく後ろ姿が見える。

(他の奴よりは素直に帰ってくれるからありがたいんだが。しかし・・・。)
なにかあったのか?っと心配してみたが下手に情をかけるのは良くないと言い聞かせその姿を見送った。
次の日もそのまた次の日もやって来る光の戦士に心配するんじゃなかったと思うのは通い続けられ10日目のことだった。
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リゼ