椅子係(武人と淑女)
「うぅん・・・。ふぅ、イヤですわ。居眠りなんてはしたない。」
研究の疲れからかいつの間にか眠ってしまったらしく欠伸をして目を擦るのは最強の黒魔導師と名高いのシャントット。
「起きたか。」
「あら、人の寝顔を眺めていたなんて失礼な犬ですこと。」
頭上からの声に上を見上げるがその顔はまだ眠そうにぼんやりとしている。
「本を読んでいて見てはいない。人を椅子扱いしておいてその言い草か・・・。」
返事はするが視線は本に向けたままだ。
そんなガブラスの膝の上には小さなタルタル族である彼女が乗っていた。
「だって貴方、サイズ的に丁度良いんですもの。」
今日は大人しく自分の椅子になり続けている姿にシャントットの機嫌は良くなっていく。
普段身に付けている鎧を外したとはいえ鍛えられた身体は座り心地が良いものではないはず。
それでもシャントットはガブラスを椅子にするのを止めるどころかしつこく呼び出す。
ガブラスが拒絶をした事もあったのだが本人だけでなくコスモス・カオス両陣営が彼女の怒りに巻き込まれる大惨事となった。
それ以来ガブラスには拒否権がなく、淑女専用の椅子となっている。
「内容おわかりになるの?」
ガブラスの読んでいる本のタイトルを眺め意外そうに聞いた。
「ジャッジマスターになる為にこの程度ぐらいは学んでいる。」
「あら、脳筋かと思ったら博学ですのね。ワタクシ、賢い犬は好きですわ。」
「それは光栄なことだ。」
機嫌良く高笑いをする淑女の様子に苦笑するガブラスだった。
- 14 -
戻る