支配(混沌×武人)
カオスに幾度となく呼び出されたがその度に相手にせずにいた。
しかしあまりにしつこいので一度だけ会う事を承諾したのだった。
会いたがっているのは向こうなのに自らが足を運ばなくてはいけない事にガブラスは納得してはいないが仕方なくカオスの居場所に向かった。

「何の用だ?」

目の前にいるカオスはいつもの巨大な姿ではなくある程度小さくなった姿で王座に座っていた。
とはいっても立てばガブラスよりは大きく、その場合は見上げて話さなければならない。
カオスの前に立ったガブラスは早く用件を言えと告げた。

「汝は混沌こそ居場所、戻ってくるがよい。」
「ふん。何事かと思えば・・・くだらん・・・。」

吐き捨てるように要求を退ける哀れな犬の反応が予想通りで神は楽しくて仕方がなかった。
神が玉座から立ち上がり自分に近付いてこようとも犬は微動だにせず元飼い主を睨み続ける。

「愚かな犬は支配されるべきであろう。」
「・・・貴様のような飼い主に飼われるぐらいなら野良犬で十分だ。」
「忠犬だった過去は消えぬ。」

忠義を持ち仕えていた過去に触れられガブラスの眉間に皺が寄るのが見てとれる。

「・・・。」
「汝の首は首輪を欲しているぞ。」

スッと手を伸ばしガブラスの首に触れてみれば眉間の皺が更に増えていく。
その反応が面白いので動物にする様に顎を撫でてみる。

「・・・こんなつまらない用事で呼び出すな。失礼する。」

付き合いきれないとばかりにガブラスは首に触れている手を叩き落とし踵を返す。
そのまま振り向きもせず去っていく犬の後ろ姿を眺めニヤリと笑った。

「汝は我のものだ。主に牙を突き立てる犬は躾ぬとな。」
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