呼べる名前もないくせに
時期尚早
最後にあなたに触れたのは、あなたの背中を押したときでした
突き落とすよ、なんどだって
かわいい子、這い上がっておいでよ
雨の中、雨の中、雨の中
そうして叫ぶよ、きみがやったと
残酷にしたってかまわない
あなたの色がどうしても褪せていかないのです。
乱暴に触れたのは、終わりにしてほしかったから
消えてしまう背中を見つめていた
生きてくれよ

清らかなふりをしている
きみの気持ちはおぞましい
底なしの他力本願
濡れた路面に映る光のようなひと
煎じて飲めるほどの部位も尽きたね
のこさず食べ尽くそう、あなたを
ディナーナイフでぼくをえぐるのはやめてくれ
聞こえているのか、よしてくれよ
土になるまで待って

やさしい世界がありました
何度の夏が、あれから、
知らなかったよ、もう帰らないんだね
消えてしまうのね、もう二度と会うこともないのね
わたしのからだにあなたの灰がつもってゆくよ
どれだけ小さなことばでも、お前のならばいとしいよ
どれだけのかなしみをあなたは
網膜だけが憶えている
群青の海に撒こう

だれも、いなくなってしまったよ
世界にわたし一人だけが、あなたの存在を感じている
愛していたよ、確かに。気が狂ってしまえばいいと思うほど。
どこまでも不明瞭でした、どこまでもみじめでした
それはあなたには毒だったのです










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リゼ