病んでれ週間(宗清編)宗茂side

※清正がなんかおかしいです
死ねた注意警報


「宗茂は嘘吐きだ」

そう言うと宗茂は眉を下げて、困ったように笑う。そしてああ嘘吐きだよ、と力なく言った。
「お前は俺を裏切った」
うん、お前を裏切ったと言いながら宗茂は瞼を閉じた。

「だから俺はお前が一番辛いことをしてやろう、これが俺のお前への復讐だ」
冷たい笑顔で清正は、宗茂の頬に手を当てた。宗茂は一瞬動きを止めたが、なにも言わず唯、目を閉じていた。まるでもう死んだように。
清正は笑いながら宗茂の首に両手を回した。そして宗茂の耳元でこう呟いた。
「お前が本当に辛いことってなんだ?」
「うーん、清正が辛いことかな」
「そんなんじゃ、嫌だ」
清正が駄々をこねるように嫌だと繰り返す。宗茂はその様子に愛しさを感じつつも、内心恐怖の念が増幅していくのが分かった。これはもういつもの清正ではない。そしてこうなった理由も実はわからないのだ。
しかしこの状況で分からないなんて答えたら、清正がもっと冷静に判断できる状況ではなくなる。それは両者にとってあまりいい状況ではない筈だ、と宗茂はごくりと息を呑んだ。

「そうだな、一番辛いのは清正が辛いことだが二番目に辛いのは子供扱いされることだ」
「そうか」
あまり興味なさげに清正が、自分の得物を握る。宗茂の首筋に一滴の冷や汗が伝った。もう終わりかと諦めた。今油断している清正を突き飛ばして逃げたらどうにかなるかもしれない。しかしそんなことしたら、突き飛ばされた清正はどう思い、どんなことをしてしまうのか。もしかしたら本当に崩壊してしまうかもしれない。もしかしたら一人でうずくまって泣いてしまうかもしれない。
それなら愛する者の手で全てを終わらせたい、と宗茂は思った。清正が鎌を握りながら宗茂の近くまで歩み寄る。そして甘い声で「むねしげ」と呼んだ。
宗茂は清正に接吻すると、「ほら」と促した。清正は笑いながら口を開いた。

「これを振り落としたら、宗茂はいつもの宗茂に戻るんだよな」
清正が本当に嬉しそうに言うものだから、宗茂は優しく笑って戻るよ、と言った。むしろ宗茂は鎌を振り落としてくれたら清正はいつもの清正に戻っているといいと淡い期待を持ちながら時を待った。

目を閉じ、時を待っていると暗い世界が不思議と心地よかった。そしてこんな状況だからこそ頭がまわり、色々考えられる。そしていつの間にか涙が出てきた。清正がこうなった正確な理由なんて分からない。でも、予想では清正は不安だっただけなんだと思った。素直になれない自分に。意固地と言われた自分に。愛されたいと言えない自分に。人の愛が気づけない自分に。
でもそれが今終わる。
清正が解放される。
そう思ったら涙が止まらなかった。
自分でも恐ろしく清正に溺愛していたことが今になって分かった。愛してる、なんていつも言っていたのに。今になって全てがいとおしくてたまらないのだ。
もし自分が生まれ変わって清正に会えたら一番に愛してると言おう。大丈夫、だってもう意味を知っているのだから。




鎌が降り下ろされる音。
しゅんっと斬れるような音に不思議と痛みは感じなかった。

降り下ろされてから数十秒。
死んだはずの自分の心臓はまだ脈を打っている。規則的にどくんどくんという音がして、死ぬ感覚が理解できていないだけかと思った。
目を開けたら、きっと地獄だろう。たくさんの人を殺めた自分が極楽に行ける筈はないと思っていた。
目を開けると、


地獄が待っていた。



今になって清正が最初に言った「復讐」の言葉が頭に響いた。なるほど、確かに
「これが、一番辛い」




目の前には赤い薔薇に飾られた愛しい人が笑い顔で横たわっていた。




愛しすぎて死んだ
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リゼ