※天使物語壱(関ヶ原中心)
※初めての長編チャレンジです
※関ヶ原中心ですが
瀬戸内
蒼紅
小十←佐
も含まれてます※
※暴力・流血表現有※
※学パロです、みんな高校生※
※なんでも許せる方のみどうぞ※
「やーい根暗!」
「お前暗いんだよ」
沢山の罵倒。小さい手で殴られれば痛くはないけれど、痛いフリをする。そうしてればみんな満足するから。だからワシは今日もみんなに殴られ…
「こら、やめぬか」
「……」
「あ?なんだこいつら」
頬を押さえながらみんなの目線を追ったら、そこには小柄な少年が二人立っていた。一人は身体中に包帯をぐるぐる巻きにした、そうお化けのような格好をしている。ワシが目に入ったのはそんな男よりも、その包帯男の影に隠れている綺麗な銀髪の男だった。美しく輝く銀髪に劣らない美麗な顔付きはまるで、そう。
天使のようだった。
ワシが見とれていたらその天使が眉をつり上げながら足下にあった石を掴み、何故か此方側に投げつけた。
「あっちいけ!馬鹿共がっ!」
石を投げられた子供達は目を丸くしたあとまだ石を掴もうとする天使に怖さを感じたのか、おぼえてろーっなんて捨て台詞と共に走り去っていった。ワシはただポカンと口を開け、その惨状を眺めていたが途端我に返った。
「だ、駄目だ!石は危ないだろ?」
次がれた言葉に次はその二人がポカンとした。そして包帯男の方が急に高笑いをしだした。
「確かに、危ないわ」
「フン!助けてやったのに何故そんなこと言われなければならん!刑部私は先に孤児院に戻っているぞ!」
「あい分かった」
孤児院…?
聞いたこともない言葉に目を白黒させるワシに向かって男は唯一見せている目元をにんまりと月形にしながら男は笑いを止めた。去っていく少年を見つめたあと流れるように自然とワシを見て、ワシによく聞こえるようにゆっくりと言葉を放つ。単に聞くと只のホラーだが、自分の為にやってくれたことだと思えば不思議と心地良い声だった。
「此処で何をしていた」
「あ、ああ。雲を見ていた」
「雲か。我も見ようではないか」
にんまりとした目元を細め、刑部と呼ばれた男は空を仰いだ。流れる雲は今日は多く、ちらちらと流れる太陽の光を隠すように進んでいった。
「見やれ。あの雲の形を。」
「あの雲か?」
「形はなんだと思う」
「雲だと思う」
はたと動きを止めたあと男は目をぱちぱちと瞬かせ、ワシを見た。その後更に目を細めながら、ワシの頭をぐしぐしと撫でる。くすぐったいが、何故か此方も表情が緩んだ。
「ぬしはよいこだ」
おじいちゃんを思い出すような口調にワシは大変心地良さを感じた。
「ありがとう…なあワシの友達になってくれねーか?」
「…我がか」
「ああ!こっちの小学校に来たばかりで友達がいねーんだ」
「いいだろう。我は大谷吉継。刑部でいい」
「ワシは家康だ!」
「あい分かった」
この出会いは偶然だったのだろうか。今ではもう分からない。
この小さな出会いが後に、
運命に変わる。
第一章 歌姫
君以外はいらないよ
君以外はいらないよ
君以外はいらないよ
寂しくないよ 悲しくないよ
辛くないよ 痛くないよ
君以外はいらないよ
君以外はいらない
君以外はいらないんだよ
屋上に響く歌声はまるで天使の歌声だった。ほかには例えようがない。
痛む傷を押さえながら、ワシは重い屋上の扉をあける。
響きわたる歌声に、美しい少年。ワシは目を見開かせながら只その少年を見つめていた。
君以外はいらないよ
君以外はいらないよ
いらない
いらない
いらない
しんとした屋上に戻れば、少年はやっと此方に気が付いた。長い睫毛を一つぱちと瞬かせれば黙って傷だらけのワシの横を通り過ぎようと進み出す。
見とれていたワシははたと気付けば本能に従うように、男の手を掴んでいた。
「なんだ…」
じとりと睨みつけられながらも、男の手は離さない。ワシは睨みつけられるのには慣れているから。ワシはそんな状況下、震える声で問いかけた。
「な、名前はっ…?」
「は?」
「名前!あっ、何組!?」
「Aの…石田三成」
どくん、心臓が高鳴るとはこういうことをいうんだろう。どくん、どくん。きっと今のワシの顔は真っ赤だろう。
首を傾げる少年に、また胸を打たれた。
か、かわいい!
なんだこれ一目惚れってやつか?
「わっ、ワシはC組の…と、徳川家康!」
そうか、と呟けば手を振り払い三成は立ち去っていった。
痛む傷を押さえながら、ワシは一人取り残され佇んでいた。
「三成、か」
これが、運命だとは誰も知らないのだろう。
「三成」
第一章 完
戻る