麗しき君へ!(瀬戸内※学パロ)1

※学パロ




「毛利って美人だよな」

他愛のない会話に違和感。長宗我部元親は目をキョトンとさせ、今の違和感を口に出した相手を見た。その男は手を握り締めながら力強く毛利元就の美しさを語り始めた。ついていけないという周りの男達の溜め息の中、元親は周りのような態度は示さなかった。頬を掻きながら御本人を見ると教室の窓際端の机で涼しい顔して読書の真っ最中だ。元親は視線を外すことのないまま、男の話に頷くことも出来なかった。

毛利元就は視線に気付いたのかどうなのか。横目でちらりと長宗我部元親を見る。つまり、目が合った。長宗我部元親は慌てて視線を逸らし、高鳴る心臓に手を当てた。

(今、俺を見た)

確信したように心の中で呟き、思わずガッツポーズ。もちろん心の中で。そう、長宗我部元親は毛利元就が好きなのだ。元就は外された視線に首を捻るも気にせずに読書を再開する。それでも元親は上がった口角を下げることは出来なかった。




授業が終わり、元親が鼻歌を歌いながら帰り支度をしていると聞き慣れないがどこか心地良い声が自分の名を呼ぶ。

「長宗我部元親」

開いた口が塞がらないとはこのことだと元親は思った。まともに話したことさえない、あの毛利元就が目の前にいるのだ。恐る恐る開いた口を動かし、なんだ?と返事をする。自分でも情けない声だと思った。毛利元就の黒に近い茶色の髪が光に当たり、輝いている。思わず目を細めてしまうような光景は時が止まったようにさえ感じた。

「貴様、先程我を見ていただろう」

あまりに直球な言葉に元親は目をぱちぱちと瞬かせた。元親を見る元就の目は氷の様に鋭く、決して友好的な目ではなかった。日が雲に隠され、輝いているように見えた元就の髪も雲に隠れたように輝いて見える訳ではなくなった。今頃元親は輝いて見えるのは太陽のせいだったと気付いたのだ。

「貴様聞いておるのか」

「あっ、わりっ…」

眉間に皺を寄せながら不愉快そうに呟く元就に、元親は呆気に取られていた。






続きます。
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