嗚呼悲しきかな赤の色(宗清)

どうでもよかった、と云えば嘘になる。清正は目を瞑って息を吸った。血生臭い香り…これが戦場の匂いだと知っていても眉間に皺を寄せた。この匂いを風に乗せて運ぶのは、俺だ。血だらけの服を身に纏いながら清正は宗茂の元へ歩いた。大地の感触が心地良い。空を見上げれば変わらない青が広がっていた。一面青、青青青青青青。変わらない空はいつも俺を見下ろす。見下したように、蔑んだ目で。今日は人を殺した日だから、なのだろうか。青い目はいつだって、俺を嫌う。俺だって嫌いだ馬鹿、小さく呟いた。何処からか風の音がした。飄々とした態度で余裕と云わんばかりの表情。空からの光に受け輝いている茶髪。そう、奴だ。奴でしかない。
「宗茂…」
俺は確かにそう呟いた。宗茂はさも愛しそうな顔をして血塗れの俺を見る。数歩歩いて近付いたと思えば、両手を広げ優しく俺を包む。お帰り、と云われればただいまと返した。奴はふふと笑ってもっと強く、でも苦しくないように器用に抱き締める。わざとらしく俺がぐえと悲鳴を上げれば、声を上げて笑った。





帰っておいで、愛しい君よ
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リゼ