僕たちの物語はまだ(宗清)


春を告げる雨はやまない
どんなに願っても
やまない、

(やめ)

ざー、ざー

(やめ)

ざー、ざー


途中で馬鹿らしくなって
やめた自分に敗北感。

雨なんか気にするな、と
負け犬の遠吠え?


ざー、ざー

雨はまだやまない





「清正」


「んだよ」


目の前の男は気持ち悪いくらい爽やかに笑っていた。

顔立ちは整っているし、
女にもてはやされている顔なだけあるから、流石に笑顔は格好良いと思ってしまう。


敗北感、




「清正は雨が嫌い、か?」


外の世界へ手を翳しながら、
宗茂は問う。


「好きでも嫌いでもないが、外で鍛練が出来ないとなると晴れてた方がいいだろ」



俺がそういうと、
宗茂は呆れた顔を向けてきた。

「可哀想に」




「なっ」




何でこいつに
哀れまれなきゃいけねえんだ


敗北感敗北感敗北感敗北感



(どうしようもない苛立ち)
苛苛苛苛苛苛苛苛苛苛苛苛


「まあそう苛立った顔をするな。じゃあ、そうだ」


「なんだよ」


「雨の楽しさを教えてやる」




急に宗茂に手を引かれ走り出す。雨は容赦なく俺達を攻撃したが、宗茂は怯むことなく足を動かしていた。


数分走った後、足が絡まり転ぶ。
水に満たされた土は、

どろどろしていてきもちわるい


「清正、大丈夫か」


「おー…、というか何で雨の中走らないといけないんだよ」


宗茂は何も言わず、
空を見た。

答えを求めるように
自分も空を見る。


雨がざー、ざーと音を立てて
灰色の雲から降ってくる。


「雨は一滴一滴どうやって降ってくるんだろうな」



宗茂は雫が落ちたときのように

ぽつりと問う。



まるで雨の一滴の様な言葉に
俺は何故その言葉が出来るのか問いたかった。











春の雨は音を立てて
泣いていた










もうすぐ春も終わるので
戻る
リゼ