※叶わない、から 3
清正視点
暴力・流血表現有
俺は、ただ人工的な光に溢れた街をさまよっていた。
行く宛がない。
何処かのカラオケ店で一泊することぐらいなら出来るかもしれないと考えたが、制服を着ていたことに気付いて断念した。
どうしたらいい
ふらふらと歩いていたら、肩に何かがぶつかった衝撃によろけて転ぶ。
「いたたっ…」
そう言って見上げたら柄の悪そうな男達が、俺を見下ろしていた。
「てめぇ…ちゃんと前見てあるいてんのかぁっ!?ああ゛ぁ!?」
「…スミマセン」
「謝って許されっと思ってんのかごらあ゛っ!!!」
嫌な予感がする。
俺は、目の前にいる男を殴って逃げた。
男達が追ってくるのは目に見えていたが。
「はあっ…はっ…」
路地裏に隠れて、息を殺す。
騒ぎになったら警官に見つかり、家にも伝わってしまう。それは避けなければいけない。
「なんで…こんなことに…」
思わず溜め息が出てしまうほど散々な日だ。
どうせなら
どうせなら
「あいつを好きにならなければ良かった」
自分でも何をいってるんだろうと思える。
「兄ちゃん゛、さっきはよくもやってくれたなあ゛?」
横から聞こえた声に、鳥肌が立つ。左右からさっきの男達に囲まれていた。
背筋に一筋の汗が流れる。
(まじかよ…)
一人の男に殴られて、地べたに押し付けられる。そして囲まれて何回も蹴られる。
その内の一発が腹部に強く入り、俺は咳き込んだ。
「げほっがっ…」
髪を掴まれ、無理矢理引き上げられた。そうしてまた殴られた。目が霞んで、前が見えない。
ぽた、ぽたと頬に何かが当たった。
「チッ、雨かよ」
男達がそう呟いて、やっと理解した。
ああ、雨か。
男がまた殴り、口の中から鉄の味がした。
そしてまた何度か蹴られて、俺は意識が途切れた。
死んだのかな
でも、もうどうでもいいんだ
もう俺には何も…
「き…ま…、きよ…さ…」
「…ん」
目を開けると、見覚えのある男が見えた。
確か同じクラスの、立花…
「立花…?」
「清正、大丈夫か?」
立花宗茂は安心そうに胸を撫で下ろした。変な奴。
立花宗茂は同じクラスだが、あまり話したことがない。正直女にモテる奴というのがこいつの印象だ。それ以外の印象はない。
「なんで…お前…」
「ん?いや買い物さ。お前こそこんな場所で何で寝ているんだ?」
「寝てるわけねえだろ馬鹿」
雨はまだ降り続いていたが、立花が傘に入れてくれた。本当に変な奴だ。
あの男達は一体どこにいったんだろう、と思ったが何にせよどこかへいったということだからラッキーとしておく。
「もう11時だ。家に帰った方がいいんじゃないか?」
立花がそう言うが、俺は黙り込む。意を決して話すことにした。話してどうにかなることではないが、言葉にして吐き出したら楽になる気がしたんだ。
「…そうか」
立花は俺の頭をやさしく撫でた。三成みたいだなと思ってしまう俺は、まだ未練が残っているんだろう。
「取り敢えず、傷の手当てをするべきだ。家に来い。」
「でも…」
「大丈夫、親はいない」
いやそういう問題じゃなくてな。
俺の反論を聞かず、立花は俺の手を引っ張っていった。
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