※月の光は君の光(清三)

※押し倒し注意
さこみつ前提

急に世界が回ったような感覚。天と地が引っくり返った、と言った方が的確だろうか。急に地面に打たれた痛みに、眉を吊り上げた。
「なんのつもりだ、清正」
全くもって想定外だった。ただ、清正に言われるがままにこの部屋に来ただけなのに。何故いきなり押し倒されたのだろうか。
「…わかんねえのか?」
口角をあげて清正は言った。確かにこの状況下で押し倒すのはつまり、ああゆうことだろう。しかし何故それが自分なのかが分からなかった。
「最悪な展開なら予想がつくな」
「じゃあきっとそれだ」
もう一度清正がきっと、と呟く。

清正がそっと自分の頬に触れると、そこに軽い接吻を落とした。ちゅ、と鳴った唇の音に三成は目を見開いた。
「清正…?」
「おねね様に借りた」
そう言って紅を取りだし、清正は色っぽく笑った。普段なら気持ち悪い、と言っていたが今は何故か妖艶に思った。
「なんで、だ」
「…わからないか」
清正は自分をなんだと思っているのだろうと苛ついた。確かに付き合いは長いが、清正の心中を全て察することが出来るというような化け物じみた特技は持っていない。
「しらん」
「じゃあいい」
清正が少し目を細めて三成を見た。普通の男が女を見るような視線に少しだけ寒気を覚えた。それにこの目は、左近が自分を押し倒したときに自分に向ける目と同じだった。
「清正、落ち着けっ…」
この展開は、まずい。
三成は頭の中に沢山詰まった単語を必死に組み合わせて場を繋ごうとしたが、全て意味のない戯れとなってしまった。





覚えているのは清正の眼に写る自分が、泣いたように頬を赤らめて目を潤ませていたこと。
そして清正の銀髪が何かの光に照らされて美しかったこと。
窓から差す光は、月なのだろうか。星なのだろうか。

もうどちらでも関係なかったけど。









清正は何かに耐えていたのだろうと思う
今まで、ずっと。
なら俺はしょうがないから
少しだけ楽にしてやろうと思った

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リゼ