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「五ェ門さん」
「なまえ、久しいな」
長らく外国へ出ていた五ェ門さんが日本へ戻ってきたという報せを受けるとすぐに私の元を訪れてきた。日本を空けていた間に得た資料はすでに準備してある。五ェ門さんが探している宝や刀に関する情報の資料だ。私はいわゆる五ェ門さんの情報網の一端。手足となって方々を駆け回る役目だ。
「五ェ門さんに頼まれていた刀剣の情報、掴めましたよ」
「かたじけない。話を聞こう」
「お疲れでしょう、ごゆっくり腰を落ち着けて下さい」
何の変哲もないマンションの一室が私の活動拠点。裏の世界に通じる仕事ではあるが、活動拠点は明るい場所でありたい。
何より五ェ門さんがこうして帰って来られた時に、少しでも心が安らぐような空間にしたいのだ。世界中を飛び回って仕事に修行にと忙しい五ェ門さんも、どうあっても人間。一時の休みもなく動き続けることは難しいし、かえって能率が落ちることだろう。
どこか一つここ!という場所があればいいだろうとの私の考えだ。部屋の内装も和で統一している。五ェ門さんがここをどう思っているかは聞いたことがないが、いつもいらして下さるからきっと気に入られていないわけではないだろうと思う。
「後からルパンらも顔を出すと言っておったぞ」
「まあ、いつぶりでしょう!それは嬉しいです」
「どうも下らないことをほざいていたが…何を言われてもあまり気にするでないぞ」
「ふふ、ええ」
茶は緑茶、酒は日本酒の五ェ門さん。この間手に入れたおいしい茶を淹れる。
お茶の淹れ方も大分勉強したものだ。飲んでもらうならばやはりおいしいものを飲んでもらいたい。湯のみを差し出せば、ちゃんと口をつけて下さる。何かおかしいことがあれば指摘して下さるし、おいしければおいしいと伝えてくれる。
そのたびに私は嬉しくなったりもっと励まねばと奮起したりする。五ェ門さんはとても良い上司です。贔屓目が入っているでしょうか。
「して、情報というのは…」
「はい、これがその…」
「ごーえもんちゃーん、なまえちゃーん、オーレオレ、オレ様よぉ」
「来たか…」
「あ、失礼します五ェ門さん」
話の途中だったが、インターホンも押さずに戸の外からの大声。久し振りに聞くルパンさんの声だ。招き入れると、あれ不二子さんがいない。今回は別行動かな。
「ややや、五ェ門ちゃんすま〜ないねお邪魔だったかしら〜?」
「ルパンおめぇ声がでけぇよ」
「フン…」
「どうぞ座って楽になさって下さい」
「んふ〜ありがとなまえちゃん」
ルパンさんたちのために今度はコーヒーを用意する。コーヒーの淹れ方もなんだかんだで覚えてしまった。昔と比べて出来るようになったことが格段に増えた。器用になった。でもそれは手先だけ。心の方は余計不器用になってしまった。
「五ェ門さん?」
「うむ…」
「話の続きを…」
「オレらのことは気にせずどーぞ!」
「黙っておれルパン!」
ルパンさんたちが来てから五ェ門さんの眉間のしわが深くなった。すぐそうやってしわを増やしてしまうなあと思いつつ話を再開させれば、五ェ門さんはこちらに意識を向けて真剣に耳を傾けてくる。求めていた情報ですもの、それもそうか。少々無理してでも情報を集めた甲斐があるというものだ。良かった、五ェ門さんのお役に立てたようだ。
「よくこれほどの情報を…すまない、助かる」
「いいえ、五ェ門さんのためですもの」
「っ、そうか」
いけない、今のは少し出過ぎた真似だったかもしれない。
「ごめんなさい五ェ門さ…」
「な〜あお二人さん?」
「わっ」
突然ルパンさんに肩を組まれて驚いた。おいよせルパンと次元さんの声がする。
「お二人さんは〜つまりアレでコレなわけ?もうどこまでいった?C?D?」
「〜っ!おのれルパン!余計な世話だっ!」
「なーんかさ、じれったいのよ。ムズムズしちゃう。五ェ門ちゃんとかムッツリじゃない?Aどころかいろはも分かってないじゃないのってのわーっ!」
「それ以上言ってみろ!叩っ斬るぞ!」
「やっべ!次元ちゃんガード!」
「おいバカッ巻き込むんじゃねぇっ」
「待たんかこの破廉恥!」
嵐のようとはまさにこのこと。神出鬼没とはよく言ったもので、去るときもまたあっという間がルパンさん一味だ。前回ルパンさんが来たときも、確かこんな風にして帰って行った気がする。
さっきまで四人いた空間に、今は私しかいない。全く静かになってしまった室内と、確かに三人の客人があったことの証に残る湯のみ一つとコーヒーカップ二つ。中身はちゃんと干されている。
いつもの通り元気そうで安心した。しばらく仕事は詰めなくても大丈夫なようだし、お茶の時間にでもしましょうか。そう思って客人の分を片付けようと腰を屈めると、戸の向こうから足音がする。コンコンと叩かれる扉。インターホンを押さず声も上げないこの人はもしかして…
「すまん、言い忘れたことがあった」
「五ェ門さん」
「今回は情報感謝する。また少し外へ出るがすぐに戻って参る」
「はい。次の情報も集めますか?」
「いや、それはいい。それとは別に…」
キョロキョロと辺りを確認する五ェ門さん。
「近い内に、また会おう」
参りました。上司に恋なんて、するものじゃありません。
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三十万打フリリク、ゆりんぬさんリクエストの部下主人公の五ェ門夢でした。
五ェ門の部下ってあまり考えたことのない設定でしたので悩みましたが新鮮に書けました。ルパン一味の情報網って多少異常なところありますし、こういう枝葉で情報集める人がいそうな気もします。変な発明品作る博士とか知り合い多そうですもんね。
リクエストから大分お待たせしてしまいました〜。どうぞお納めください。
リクエストありがとうございました、感謝です!
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