季節は冬、外は大雪、ここはこたつ。まったりとした昼下がり。たまの休息にのんびりとこたつにインしてテレビなんかを見たりしている。今は何だかよく分からない恋愛物のドラマの再放送か何かをやっているらしい。私は見るともなく見ていて、次元はちょっと前から静か。多分居眠りしているんだろうと思う。ルパンはこの寒いのにアイスを買いに行くと少し前に不二子と一緒にアジトを出て行った。もんごえ様はこたつにも入らずテレビに釘付けである。演技と演出の何とも言えないしょっぱさになんじゃこりゃと思った瞬間から私は真面目に見るのを止めていたが、五ェ門にとっては注目に値する何かがあるらしい……よう分からん。
と思っていたら、ここで終わりかよ!なところでエンドロールが流れ始め、前に乗り出すようにしていた五ェ門が背筋をしゃんと伸ばしてぷんすか怒り始めたではないか。



「何だこの男は。気に食わん。拙者むしゃむしゃした気分」

「むしゃむしゃじゃなくてむしゃくしゃだよ、五ェ門。ほら、むしゃくしゃしてるなら、これむしゃむしゃしな」

「みかんか」



ぷんすかと一人怒る五ェ門が私の言葉に振り向く。ほいとみかんを投げて寄越すと、食べ物を投げるでないとお叱りを頂いた。確かにそうだ、面目ない。



「私さっきからずーっとむしゃむしゃしてて、手が黄色くなっちゃった」

「そなたいくつのみかんをその腹に収めた…机が皮だらけではないか」

「このみかん甘くてうまかよ〜」

「ふむどれ……ぶ、えほっ、お、お主騙しおったな!甘くなどないぞ!」

「ありゃ…あ、それ酸っぱそうだなと思って除けてたやつだ。しかももうみかんないや。最後の一個ときたもんだ。ごめんごめんご」

「く…お主と言えども許さんぞ!」

「おわ…斬鉄剣はんたーい!こたつへごあんなーい!」

「ぬおっ、何をする!」



斬鉄剣を抜きかけた危ないもんごえさんを阻止するために、袖を取って引き倒してやった。そのまま袖を引っ張って五ェ門を頭からこたつの中に押し込む。じたばたして、途中次元の足を踏んだり蹴ったりしてしまいながら、五ェ門とぎゅうぎゅう格闘した。
ぶはっとこたつから顔を出した五ェ門は、怒り半分呆れ半分の微妙な顔をした。髪の毛がぐしゃぐしゃなのを見て私が笑うと、怒る気も失せたのか100%呆れ顔になって、それでも笑う私の頬を結構強い力で抓ってきた。



「いひゃひゃ、はなひておくんなまひー」

「ふん、これくらいで済んでマシと思え」

「おにあくまえもん!」

「何だと貴様…」

「おま…お前らうるせぇぇっ!俺の足踏むんじゃねぇ、余所でやれ余所で!せめてこたつから出やがれ!」

「たふけてーひへん」

「聞け次元、こやつ拙者をだまくらかしおったのだ」

「だからそれを余所でやれってんだよ!俺ァ気持ちよくウトウトしてぇんだ!」



次元も加わってぎゃいのぎゃいのと騒ぎ出す場はもはや収拾不可能。ばたんばたんと狭いこたつで騒ぐからこたつがもはやこたつではなくなっている。
あ、ルパンが帰ってきたみたいだ。



「次元ちゃ〜ん、聞いてくれよぉ〜愛する不二子にアイス持ち逃げされちまったんだけっども…」

「だあー!俺に、話しかけんじゃ、ねえー!」

「あ、そうだ。みかんまだストックあるや」

「なにっ、それを早く言わんか」

「取って来ておくれ五ェ門や。それ、そこの箱じゃて」

「何故拙者が。お主が行けばよかろう」

「何だと!」

「そうであろう。そもそもお主が…」

「なあ、次元よ〜」

「ルパン!お前さりげなく隣に入ってくんな」



狭いこたつの中にでかい図体した良い年の人間が四人も入ろうっていうんだから、くつろげるはずもないわな!と、みかんを取りにこたつを出た私は寒さに震えながらしみじみ思ったのだった。









――――――――
こんなパワフルファイトにするつもりでは……




リゼ