――いや、今絶対片倉小十郎がいた。ガチ。どう考えてもガチ。
――普通に現代の服着てたけど、顔がマジで片倉小十郎だった。
――そんなんあるわけないって思うじゃん?あんだな、これが。
――コスプレならプロすぎるし、本物なら謎じゃん?現実か?



この時代の人間がよく手にしている木簡のような物、携帯…とか言ったか。みょうじも持っているが、今いち勝手が分からない。説明されたところによると、遠くの人間と話せるとか。俄かには信じ難いが、そういう物なのだと言われれば納得する他ない。俺には理解のできない事ばかりだ、ここは。
今だってそうだ。通りすがりの女が一人、俺の顔を見るなり大きく目を見張り木簡擬きを慌てて弄り始めた。何だってんだ…。



「お待たせしました〜」

「おう」



くりいにんぐ屋なる店からみょうじが出てくる。この店も不思議で、衣を洗って貰う為だけの店らしい。そんな事も他人に頼んじまうのか。つくづく不思議だ。家で洗うのが難しい服を頼むんですよとはみょうじの談だが、ますますもって分からない。片倉さんの時代でいったら鎧を洗うみたいなものですかね、とも言われたがそれは違うんじゃねぇかという事だけは分かった。



「この時代の物事は、ちと難しい」

「そりゃあそうですよ。逆に結構順応してる片倉さんがすごいと思います」

「してる様に見えるのか」

「多少は…。違いましたか?」

「多少はな。だが、根本から理解できている訳ではねぇ。携帯と言ったか、先程からそいつが気になる」

「携帯がどうかしましたか?」

「俺を見て、そいつを弄り出す奴をもう三人は見た」



今日だけの話ではねぇ。外に出る度多かれ少なかれ感じる視線。敵意はないから恐るるには足らねぇが、居心地は悪い。この時代では異物であるだろう事を勘付かれでもしているのだろうか。



「うーん…まあ片倉さん目立ちますしねえ」

「そんなに珍しいか、俺みてぇのは」

「現代の感覚でいうならちょっと住む世界の違う人種といいますか…あまり大きな声ではいえない方達といいますか…」

「良いのか、悪いのか」

「私個人としてはいい意味でも捉えてますよ。片倉さんかっこいいですしね」

「…世辞として受け取っておくぜ」



突拍子もねぇ事を言う奴だ。こんな所でごまをすってどうする。
調子を狂わされていると、続け様に宣う。



「お世辞じゃないですよ。鏡見たことないんですか?」

「あのなァ…。荷物が重くて、気でも飛んだか」



衣の他に寝具も洗濯して貰ったせいでフラフラしてやがるみょうじの手から荷物を取り上げて先を歩く。



「わ、ありがとうございます。あの、そういうところとかですよ。何も見た目だけの話ではなくて…」

「これは忠告だが、そういう甘言蜜語には気を付けた方がいいぜ。余計な乱を招く」

「ごめんなさい、嫌でしたか」

「嫌だとかじゃなくてだな…」



どう落とし前をつけたものか。このまま調子を崩され続けたら、俺はどうなっちまうんだろうな。





リゼ