気儘なのは
「ん。」
ここは十番隊の執務室だ。
久しぶりに日番谷隊長が出張でいないから、思う存分昼寝を楽しんでいたというのに…。
「何よ。」
「んー。乱菊をデートに誘ったろ思て来たらお昼寝中やったみたいやから、邪魔したらあかんかなーって思て。」
「…十分邪魔よ。」
こいつは髪を撫でていたらしい。
まったく、見つかったらどうするのだ。
しかもくすぐったくて起きてしまったでは無いか。
せっかくの貴重な時間を。
「随分と不機嫌そうやねぇ。赤ん坊が眠くてムスッとするのに似とるね。可愛い。」
あんたがそうやって楽しそうな顔をするから、余計不機嫌になるのだというのに。
「…ギン〜眠い〜。あんたのせいで。」
「こら悪いことしたなぁ。はい、水。」
「ありがと…。」
目をこすり伸びをするわたしを相変わらず面白そうに見ている。
相変わらず悪趣味ね。
居心地悪いじゃない。
もう慣れたけど。
「ねぇ。デート行くんでしょ?だったら飲みに連れてってよ。高いとこね?」
「まだ昼やで?」
「いいでしょ別に。飲みたいのよ。」
「しゃーないなぁ。」
ギンは苦笑いしながらも、髪を撫でてくる。
ムカつくわね。
「キスして。」
「え?」
「いいじゃない。したいの。」
「しゃーないお姫様やなぁ。」
ギンがお申し付け通りキスをすると、
「足りないわよ。」
仕方ないと、今度は少し長めに。
「足りない。」
今度は濃厚なディープキスで返された。
流石にギンは面食らっているが乱菊は至って冷静。
「…乱菊?ボク、今要らぬ気を起こしそうなんやけど?」
「あら。じゃあギンの部屋で飲もうか。」
にっこり。
見上げてくる。
すくっと立ち上がると、
「じゃあ、行くかー。」
と大きく伸びをした。
いつだってあんたを困らせたいのよ。
飽きないでしょ?
作戦よ作戦。
困った困った。
誘えばするりとかわされ、気ままにボクを振り回す。
これが計算やったらとんだ悪女やで。
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