謝罪
私は、どうしたらいいの。
あの、
最後の言葉…
どう、捉えたらいいの。
「ごめんな。」なんて、馬鹿じゃないの?
そんな子供じみた言葉で…何を伝えたかったの?
そんな言い方、あの頃を思い出すじゃない。
これも裏切りの一部?
私の心を揺さぶるだけ揺さぶって、あんたは光の中へ消えてしまった。
ずるいわ。
死にそうなくらい、困惑している。
死にそうなくらい、怖いの。
怖いのよ。
私は、あんたが分からない。
あんたは、私をどうしたいの。
ああ、手が燃えて千切れても、あの手を離すべきじゃなかった。
この左手が、あんたの脈を覚えてるの。
ごめんね。
去り行くあんたを、止められなくて。
何度だって謝るわ。
だから、どうか戻ってきて。
もう一度、あんたの血の流れる音を聴きたい。
あんなものを、見せるべきじゃなかった。
ボクは身を引きちぎられるような後悔に苛まれる。
ああ、ボクはなんて愚かなんだ。
自らをこの刃で貫いてしまいたい。
だけど、ボクの脳は後悔を重ねすぎて麻痺しているようだ。
まだ笑みを浮かべられる。
まだ、乱菊、キミを想えるよ。
藍染には、もうボクの目的など見透かされているだろう。
分かっていながら、一縷の望みを捨てられず、キミを捨てるボクを許して。
いや、許さなくていい。
だからどうか、ボクを忘れて。
そして目的を果たしたら…
どうして欲しいのだろう。
乱菊の元に帰りたい。
そしてこの腕で抱き締めて、一生をかけて償いたい。
だけどもし藍染から奪われたものを取り返したとしても、ボクは裁かれ、待つのは死のみだろう。
もう一度会えても、乱菊に今までの経緯を説明するつもりは無い。
きっと、自分を責めるから。
もう、傷つけたくない。
乱菊の傷など、全てボクに降りかかればいいのに。
傷つけ、自らの行為で傷つく愚かなボク。
だから今日もボクは心の中で、叫ぶ。
ごめんな。
愛してしまって。
運命は君をいつも追い詰めるね。
私が手を下すまでも無い。
君があの日、私を見ることがなければ、ずっと幸せだったのだろう。
笑いが止まらないよ。
運命は常に僕に見方するのに。
あの日、松本君が君を捕らえようとしたのは、実に愉快だった。
君を苦しめるだけだというのに。
君達はいつも互いを傷つけあう。
悲劇の観客としては実に面白いよ。
あんな表情は初めて見た。
今まで必死になって自分を隠そうとしていたのに、彼女の前ではその決意さえ、瓦解してしまうのだね。
滑稽だ。
そうだ、君が死ぬときは僕の手で殺してあげよう。
観客として、精一杯の誠意だ。
僕を死ぬ程恨むがいいよ。
すまないね、
神に代わって謝ろう。
神に一番近い私が。
俺は大切な人を守れなかった。
馬鹿だ。
馬鹿だ、馬鹿だ馬鹿だ。
未熟で、愚かで、あいつの手の上で転がされている事にも気づかなかった。
雛森を傷付けるのに、加担していたようなものだ。
俺のせいだ。
すまない。
謝っても謝っても、許されない。
強くなる。
だから頼むから、目を冷まして。
そして俺にお前を守らせてくれ。
俺のエゴを、どうか許して。
ごめんね。
ごめんな。
すまないね。
すまない。
無意味な謝罪が今日も響いて、絶望が世界を染める。
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