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とある夜。
今日は坂田ちゃんと一緒にお風呂に入ってヨーグルトパックをして女子寮タイムを過ごしたんだぜやっふぅ!!
やっぱ女の子と二人だけの空間ってなんかいいよね!
男所帯に長らく居ると「やだー、最近ちょっと太ったかも。」「えー?そんな事ないって。むしろもっと肉つけた方がいいよ。」なんていう、女子特有の承認欲求と心にもないフォローのやり取りみたいなのがたまに恋しくなるんですよ。

現世でOLしてた時には同僚女子達のそういう会話を右から左に流しながら「うぜぇなオイ。」なんて思ってたけど。
いざそういう会話が無くなると寂しいもんです。

まぁそのおかげで坂田ちゃんとたまにする「現世の女子ごっこ」が楽しいんだけどな!
でも坂田ちゃんの場合は歯に衣着せないっていうか、ねぇ。

「あーやべー。最近腹の肉ついてきたかも。坂田ちゃん、私最近太ったかな?」

『うん。でもご主人ぐらいの年齢ならついた肉はすぐに落せるから大丈夫だよ!ほら、今ちょうど湯船に使ってるし、脂肪が固まる前にこうやって解せば落しやすくなるよ!』

的確かつとてもためになるフォローをありがとう!!!!!泣いていい!!??


【もしもあの子た刀剣だったら/リクエスト番外編】


「ねぇ長谷部、最近私太ったかな?」

「ふくよかな主もそうでない主も私の主に変りありません。しかしあえて申し上げるならば主はもう少々ふくよかであられても宜しいかと。」

現世女子の丁寧版かよ長谷部。
私の髪を乾かしてくれている長谷部に先程と同じ質問をしてみると、現代女子のすごく丁寧バージョンのフォローをしてくれた。

いや、彼は私に嘘を付かないしフォローではなく本心か。
でも女子(坂田ちゃん)の目の方が厳しいし確かだから、とりあえず毎晩マッサージはかかさないでおこう。

「紅桜、熱くはないですか?」

『んへへ、指がくすぐったい。』

「よろしい。」

いや「よろしい」じゃなくて、会話がかみ合ってないよそこの番達。全然よろしくないよ。
私の隣で髪を乾かしてもらっている坂田ちゃんと、ドライヤーを手にしている小狐丸の会話に色々と突っ込みたい所があるがもう何も言わないでおこう。めんどくせぇ。

さてさて、坂田ちゃんとの女子バスタイムを終えて、ドライヤーとかバスタオルとかを置いている部屋にやってきた私達。
すると部屋には先程まで風呂に入っていたであろう三日月と、彼の髪を乾かしてあげている今剣、そして私の髪を乾かすために待機していた長谷部の姿があった。
ちなみに坂田ちゃんの髪のお手入れ係は小狐丸だ。
彼は自分の毛並みに対するそれと同じぐらい、坂田ちゃんの髪(彼は毛並みと言う)の手入れに力を入れている。
それこそ乾かしながら枝毛が無いかしっかりチェックするほどに。

「主、恐れながらここ最近御髪の乾燥が目立ってきておりますので“とりーとめんと"を保湿重視のもの変えた方がよろしいかと。」

「おぅふ。私の毛並みもしっかりチェックされてるし。ありがとう長谷部、明日からちょっとお高めのトリートメントでお手入れするわ。万事屋のネット通販で注文しとこ。」

『ご主人、私のボタニカルシャンプーの詰め替えも一緒に買ってー!』

「おっけーおっけー。他の刀剣達の分もまとめて注文しちゃうから長谷部、後で彼らに必要な物がないか聞いといてもらえるかな?」

「承知いたしました!」

まぁ洗髪剤に拘るのは燭台切と清光と乱と小狐丸ぐらいだしな。
他の連中は「え、別に石鹸でいいわ。」とかいう男子みが強いやつらばかりだし。
ほら、今そこで今剣にドライヤーをかけてもらっている三日月も「俺はいつもの牛乳石鹸でいいぞ。」って言ってるし。
牛乳石鹸で髪洗ってるくせになんであんなにサラッサラなんだろ。

「主、御髪が乾きました。お疲れ様でございました。」

そんなこんなしているうちに私も坂田ちゃんも髪が乾いて、しっかりブラッシングまでしてもらってドライヤー終了だ。
なんかどこかのヘアサロンの美容師みたいな長谷部に礼を言って坂田ちゃんに視線を移すと、小狐丸に入念にブラッシングされながら女性誌を見ていた。
何処のヘアサロンだマジで。

「坂田ちゃん、何読んでんの?」

『ファッション誌だよー。うちには女子はご主人と私しかいないのにね。』

きっとこの女性誌は乱か清光がお肌とかのお手入れしながら読んで、無造作に置いていった物だろう。
坂田ちゃんが読んでるのはティーンズ誌だけど、その他にも棚にはメイク雑誌やら女子力高い雑誌が並べてある。

私もティーンズ誌見るのとか久しぶりだわ。
今の若い子はこういうの着てんのかー。今の時期からはニット系が多いのね。それにしてもダボダボのニットで萌え袖はいつの世代も同じだなぁ。

坂田ちゃんが見ている雑誌を私も覗きこんで「あ、これ可愛い。」と指差し合う。
うわ、やべ。今の私めっちゃ女子してるわ。やばい。いいなこういうの。
すると髪がすっかり乾いた三日月と今剣も雑誌が気になったのか、私と同じように覗き込んできた。

「ほぉ、今時の女子(おなご)はこのような着物を好むのか。」

「露出が高すぎだな。年頃の娘がこのように足を出すとは・・・・。」

ふむふむ、と時代の流れをすんなり受け入れる三日月と、ミニスカのワンピースを見て顔を顰める長谷部。性格が出すぎて面白いわ。
すると坂田ちゃんが「はいはーい」と挙手して長谷部へ向かって口を開く。

『長谷部先生。それ言っちゃったら私の戦装束なんてほら、がっつりスリット入ってますし。一応レースの短パンはいてるけど、このモデルさんとは比にならなくらい毎日足出してますよ。』

「年頃の娘、と言っただろう。刃生10年やそこらの赤子が何を言う。」

『私も見た目はお年頃っすよ。おっぱいあるし。』

「あと500年程生きてからそういう事は言うんだな。年頃の娘なら恥ずかしげもなくそういう事は言わん。」

『おっぱい!!!!』

「やめんか!!!」

なんか長谷部先生と教え子がわちゃわちゃしてる。おもしれー。
教え子が淫語(とまではいかないが)を言うのを叱る長谷部先生だけど、否定すればする程ムキになるのが幼女なのだよ。
あ、最終的に長谷部が通常装備のハリセンを懐から取り出したもんだから、坂田ちゃんが小狐丸の背中に隠れて終った。
坂田ちゃんに頼られてめっちゃ嬉しそうな小狐丸。良かったね。

だけど。

「べにざくら、おなごがおっぱいなどと軽々しくくちにするものではありませんよ。おくちがわるい舎弟にはこうですっ!めっ!めっ!」

『ああああああごめんなさいいいいい!もう軽々しくおっぱいなんて言いません!ごめんなさい今剣先輩!』

ビニョーンと坂田ちゃんのほっぺを引っ張って説教をしている今剣パイセンは一体何事。
坂田ちゃんも坂田ちゃんで、長谷部には反抗期していたのに今剣には素直にごめんなさいしてるし。
本当この2振りの上下関係は謎だわ。
ちなみに長谷部と小狐丸は風呂上りのお茶を取りに行った。

すると早々にティーンズ誌から興味をなくして今剣とアルプス一万弱してる坂田ちゃんとは対照的に、真剣な表情で雑誌を見ている三日月がふいに口を開く。

「なぁ主よ。」

「なんだい、おじじ。」

「この着物、名前に似合うと思わんか?」

「思うよ。めっちゃ思うよ。そしてジジイが考えてる事、主なんとなく分かった。」

三日月が広げているページは女子高生の一ヶ月着まわしコーデ特集。
一ヶ月着まわしって・・・・・いやいや、女子高生は毎日制服しか着るもんないだろ。お家コーデとかそんなに着替えるの今のJKって。普通にタルンタルンのTシャツ短パンの部屋着でいいじゃん。家ん中でもコーデ気にしなきゃいけないって、大変だな今のJK。誰に見せるの?お父さん?

そんな事を考えながらその・・・・一ヶ月着まわしコーデを見やる。
まぁ基本は制服だな。JKの制服かわえー。うちはセーラーだったらブレザーの学校に憧れたなぁ。
お部屋着はダボダボトレーナーにスキニーか。それにダボダボニットと短パンデニムにタイツ。ダボダボばっかじゃねーか。いやでも可愛いわ。私がこれ着たら年齢的にちょっとアレだけど、坂田ちゃんが着るとなると話は別だ。
私が十代の時に着てた洋服とか制服はまだ実家の押入れにあったはずだし、この雑誌を見る限り私が持っている洋服とあまり大差ない感じはする。

「主や。」

「みなまで言うなジジイ。気持ちは痛いほどによく分かる。」

きっと今の私と三日月の頭の中はシンクロしてるのだろう。
明らかに何かを検討している私と、何かを期待している三日月。

「・・・・お母さんに頼むか。」

「ご母堂殿・・・・・・なるほど!主よ、もしや・・・・・!」

私の「お母さん」という単語にパッと目を輝かせる三日月は、もう私が考えている事がすっかりわかっているようだ。
私が「お母さん」と言う時は大概実家から何かを送ってもらう時だから。

三日月と目を合わせて頷き合うと、そのまま同時に坂田ちゃんに視線を移す。

まだ今剣とアルプス一万弱をしていた。飽きねぇな。

「今から頼んだら多分明後日には荷物が送られて来ると思うから、その日は君と坂田ちゃんは同時に非番にしよう。普段使う事はないけど主権限を存分に使わせてもらう。」

「あいわかった。ならば俺は一期か堀川にあの小さな絵師を借りておこう。」

私達の企みを知らない坂田ちゃんを他所に、計画は粛々と進んでいたのである。


◆◆


二日後。
予定通り実家から届いた荷物を私の部屋に運びこんで開封したんだけど、とりあえず最初に思ったのはこれだった。

実家の柔軟材の香りが懐かしすぎるのと飼い猫のジジに会いたい。
年一回審神者の有給的な感じで許可されている里帰りの時に、毎回「・・・え、誰?」って顔をして警戒しまくるジジ。
しばらくして近寄って私の匂いを嗅いだ瞬間に「なんだお前かよ!ンもう早く言えよこのっ!」って感じで体当たりしてくるジジに会いたい。

・・・・・・っと、まぁ私の飼い猫語りはこのあたりにして、ダンボールの中を見てくれ。
私が通ってた高校の制服(冬用)にちょっと大きめのトレーナーにスキニーにニットに短パン!!!
なんだよお母様、あなた天才かよ!私本人があるのかどうか分からない、とりあえず言ってみた系の服まで全部揃ってるじゃん!ていうか本当に私こんな可愛いニットとか持ってたっけ!?・・・・・・いや、持ってなかったよ!誰のだよコレ!!

明らかに私のじゃない可愛いニットはまだ新しいものだった。
服の裏側のタグを見たら「しま●ら」って書いてあったから、私が着ると思ってお母さんたら新しく買って一緒に詰めたんだろうなぁ・・・・・。

お母さんの愛を感じながら服を取り出しては広げてコーデ別に分けていく。
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リゼ