私の全ては骸様の為に。
この命も力も貴方から与えられたものだから、全て貴方に捧げるの。貴方の為なら何だって出来るわ、例え命を投げ棄てる事も。だって私はそもそも貴方の手の上で生かされているようなものだから、命なんか貴方の意思一つで潰れてしまうんだもの。それを自分から棄てようが貴方に殺されようが、別にどうだっていいの。何だっていいの。




………そんな骸様に言われて仕えている、ボス。ボスはとてもやさしい人、…ちょっぴり腹黒いけど、ふわり、と微笑む姿はすごくかっこいい、…と思う。もし私が出逢ったのが骸様じゃなくてボスだったら。…そうしたら、きっと私はボスに絶対の忠誠を誓っていたんだろうな。今だって誓ってはいる、でもそれは骸様に言われたから。あくまで骸様の意思の上。それだけで私はボスの為、…ううん、骸様の為に戦っている。だからもし、もし骸様がボスを裏切れって言うのなら、私は簡単にボスを裏切るだろう、と。
……そう、思っていたのに。







「クローム、ボンゴレを殺しなさい」

「クローム、君は俺の守護者なんだよね?…なら命令だよ、骸を殺して」




私が従うべき二人の人から同時に下された、残酷な命令。……私、は、骸様のものだから。だから私は、ボスを殺さなきゃいけない。……いけない、のに、どうして。
どうして、体が動かないんだろう。



「…クローム?」



ほら、骸様が不思議そうに私を見ている。仕方ないわ、私は骸様に絶対忠誠を誓っているんだから、すぐに従わない私を可笑しく思うのは当たり前のこと。ボスはと言えば、…やさしく、笑ってる。きっと私が迷うのなんか想定内で、…その上で、私に命令しているんだ。……やっぱり、すごい。



「クローム、殺しなさい」

「クローム、骸を殺して」




骸様がやんわりと睨む。ボスがやんわりと微笑む。………私は、…私は。




「…………」




そっと三叉の剣を取り出して、じゃきり、と柄を伸ばす。……私が従うべきは、あの人だから。
……だから、私は。




「……貴方を、殺す」





その矛先を喉元に突き付けて。
ザシュリと、心地よい音が、響いた。





引き裂かれたのはどっちだ




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リゼ