限定氷食症
*クザンと同期の男主は氷食症
どっかにありそうな話
ガリガリ… ガリ… ガリガリ……
「……ねぇ。」
『…ガリッ …。ん?』
「ッ…。氷噛み砕くの止めなさいやって何回言えばわかるの? … 歯欠けるよ?』
そんな柔な歯してねぇよと◯◯は言いながら腰のホルダーから水筒を取り出す。
それにはお茶などの飲み物ははいっていない。入っているのは
カラン…
そう。氷だ。
階級こそ変わったが、お互い気の知れた相手として入隊した当初から友としての立場は変わらない◯◯は、書類や頭を使うことに対しては大雑把でも部下や自分に対する細やかな気遣いができ、カラリと見ているこっちまで明るくなるような笑顔を向けられるのがクザンは好きだった。
だかそんな◯◯に対して、苦手としていたのがその特有の症だった。
ガリッ…
◯◯は氷食症だ。
出会ったばかりころはそんなことはなかったはずなのに、◯◯はいつの頃からか常に氷を食し、水筒に常備しているようになった。
ガリガリ…
その音聞くと、クザンは何とも言えない感情が沸き上がってくる。
ヒエヒエの実の能力者故か、自分自身が噛み砕かれているような錯覚に陥るのだ。
その笑顔に心を持っていかれているクザンにとっては堪ったものではなかった。
『……あっ。』
「…? なに?」
『…氷がない。…これで最後だった。』
…またか。
水筒を覗きの込み、最後の氷をガリガリと噛みながら、◯◯はチラリとクザンに視線を向けた。
「……さっきつくってあげたどころでしょーよ。」
『!? クザァ〜〜ン!!』
頼むー!と空になった水筒と共に頭を下げる姿はもはや海兵たちの知るところだ。
クザンがヒエヒエの実の能力者だから常に側にいるのだろうとすら思っている奴もいるだろう。むしろクザン自信もそうなのではないかと常々思い始めている。
それでも、傍にいてほしいと思うのはもはや末期だ。
深くため息を吐きながらも、寄越された水筒に指を突っ込む。
◯◯がカラリと笑う。
カラン カランと自身の分身のような氷を一つひとつ作っていく。
ああ むしろ自分の指ごと凍ったまま切り離し、◯◯に噛み砕かれたら。
そんな感情をのせながら、水筒を氷で一杯にしていく。
「……はいよ。…大事に食いなさいよ。」
『サンキュー!! いつも悪いなクザン。』
「…そう思うんなら、少しは控えなさいよね。』
蓋を閉めながら礼をいう◯◯にそう促すと、そりゃ無理だなと何ともいえない笑みを此方に向ける。
『本物が食えない以上、これで我慢してんのよ。』
「…………は?」
氷に本物も偽物もあるのかと疑問が襲うクザンを余所に、◯◯はスッとクザンの手をとり先程自分の為に氷を作ってくれていた指に顔を近づけた。
カリッ…
「…ッ!!!!?」
◯◯は先程まで食していた氷とは違い、優しくしかし確実に歯形がつくようにクザンの指を噛んだのだ。
は?え? …は?
いきなりのことで言葉がでないクザンを余所に、◯◯は自身がつけた歯形をひと舐めし、優しく手を離しす。
そして再び氷を食べた始め◯◯はカラリと笑い
『俺、氷食症っていわれるけど、お前の氷しかくってねぇからな。 』
その言葉に、目をこれでもかと見開くながらクザンを残し、◯◯は『お前の味がする』と再び氷を噛み砕だくのだった。
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