お祭りすんだ原っぱに
*前世の知識あり。原作知識なし。
*新人海兵
*長身








俺自体、海兵に憧れがあるわけでもない。
只、こちらの世界での父親が海兵で、体格にも恵まれ、努力を重ねもう少しで正義を背負ったコートの地位を与えられるというところで、殉職した。

幼い頃から、お前は俺より凄い海兵になるぞ、と前世の記憶のお陰で子供らくしない大人びた俺に語りかけていた父の洗脳のようなものがあったのだろう。
俺は自然と海兵になった。

父譲りの恵まれた体格のお陰で、同期の奴らを殆ど上からの見下ろしていた。


「◯◯話してると首痛ぇーよ。」

『屈んでやろぉーか?ニヤリ』

「!!ムキーーーっ!!!」


大抵そのあとは膝カックンである。ひどい。

この世界では、前世の記憶のままで生活していてら驚くことばかりだ。だいぶ慣れたとはいえ巨人族なるものや魚人や海王類など、種族や島、食べ物までも、、とにかく俺からしたら普通じゃなかった。
故に、俺の身長が高いこのなど、とくに特化したものではない。
只、他の新兵よりは見つけやすいようで、雑務を頼まれることが多いだけだ。


今日も演習後のダルい身体を引きずり、頼まれた山積みの書類をとある上司の執務室に運んでいる。

『…腕いてぇ…。』
まだまだ鍛えたりないということか、、。


少しでも意識を逸らせる為、渡り廊下から見えるオレンジ色の空を見上げた。日没が近いようだ。


『…(空の色は変わらないなぁ。)』

この世界はそれぞれ島によって、四季が別れている。
全ての四季を味わえていた俺にとっては、なんとも残念なような気がするが、それもその島の特色で魅力でもあるのだろう。飛躍的住みやすく、海軍本部があるマリンフォードは多くの住人がいる。



それでも、太陽は同じなのだなと思いながら夕日をみると、なんとなく秋だと感じでしまう。



秋といえばお祭り。田舎にすんでいた俺は、それはそれは毎年楽しみにしていたし、思い出せる一番の古い記憶で、婆ちゃんに買ってもらった風車をいつの間にか落としてしまい、次の日も探しいったがどこを探してもなかったので、きっと誰かがもってかえってしまったのだろうと、子供ながらにその見知らぬ誰かを恨んだりした。





しみじみと夕日をみていたらそんな記憶と同時に、似たようなことを歌った歌を思い出した。

『(…確か、子ども番組の、、。)…』

俺は知らずしらず呟くように歌っていた。




何故かはわからないが、歌詞やメロディーは歌えば唄うほどハッキリと思い出せた。いやはや不思議である。かなり遠くの記憶だっはずで、子どもながらに歌詞など間違えて覚えていたと思ったのに



しかし、それが気持ちよくて足も軽くなる。






テンションも高くなり、俺は普段だは嫌でも気がつく視線に全く気づかなかった。


それも気持ちが高揚すると共にふえていく視線の数にも











『…〜♪ ! っと。通りすぎるとこだった。』

危なかった。歌がちょうど終わったところでよかった。



しかし、ノックをしようと扉を確認すると、微かに開いている。閉め忘れなど、珍しいと思いながらも書類を持つ身としてはありがたい。


抱えた書類を落とさないように、肩で扉をひらくとそこにはもうひとつ壁があった。



『失礼いたし…!?』


「………。」



その壁には人をそれだけで射殺せるであるろ目があった。






大将赤犬。
徹底的な正義を掲げる三大将の一人だ。
俺よりも少し高いが殆どかわりない身長故に、その視線を受けることが多い。
だからこそ、その瞳が、今は少し緩やかになっているような気がした。

しかし、相変わらず眉間には深くシワが刻まれているので気のせいだろう。







『もっ…申し訳ありません! 追加の書類をお持ちしました!!』


「……。」



…無言というなの答えでは恐怖しかない。


まさか、、とは思うが歌を聞かれたかと冷や汗が流れる。

いやいやまさか、そんな大声で唄ってなんて、、 ないよな







『…歌を唄っちょったんは、おどれか。』



おぅふ。

儚い希望は砕かれた。いや希望どころか、もしかしたら命までも砕かれるかもしれない。

海賊を潰す海兵がなにを軟弱な歌をなどと。

彼自身の正義を否定するつもりはないが、それをこちにまで求めるのはやめてほしい。

サカズキ大将に憧れて入隊した奴らならともかく。やめてほしい。



それでも、職場で歌ったのはまずかっただろう。敬礼はできないので、姿勢を但し謝罪をのべる。しかしそれでも納得しないようで、彼の視線は一向にこちらを向いたままだ。




『…あ…あの…。』

「おどれは、能力者か?」

『……は?』

俺と言葉を遮るように、大将の口が開いた。


でも何故に?
能力者って。悪魔の実を口にしたのかってことだよな




「……どうなんじゃ、ハッキリ答えんか。」

『!! ちっ… 違います。』

俺の記憶が正しければ、生まれてこの方、そんなものは口にしたことがないし、その実はメチャクチャ不味いと噂だ。そんな味を忘れることはないだろうし、口にすれば海に嫌われカナヅチになるというが、つい先日俺は泳ぎの訓練を受けたばかりだ。


何故そんなことを聞くのか、頭はますます真っ白になるばかりだ。


紛れていた腕の痺れが復活してくる。

早く置いて退室したい。そして大声で歌いたい。先程の快感をまた味わって、この頭をスッキリさせたい。



俺の言葉に納得したのか、ほうかとだけ呟き背を向け机へと歩きだした。
多少ほっとしながらも後に続き、彼が着席するのを確認し空いているスペースに書類を追く。


大将の視線は途中だったと思われる書類に注がれ、もう俺にはない。


失礼いたしますと今度こそ正しい敬礼をし、入ってきた扉へと足を進める。

もうなにも言ってくれるなと願いながらノブに手をかけたその時、またあの声が聞こえた気がして振り替えった。








「……… 名前はなんちゅうんじゃ。」


…えっ…?
『…ハッ。 ◯◯二等兵であります!!』



「…ほうか。」

『はいっ! 失礼いたします!!』










今度こそ退室した俺は、足を止めることなくそのまま歩き続け、階段の影に身を隠し盛大に息をはいた。



名を聞かれたというこは…
近々俺はどこかにとばされるか、辞めさせられるのかもしれない。



心の中で父親に誤りながら、その日は眠りについた。










しかし、そんな思いが希薄におわるのは、次の日大将からようやく捻り出したとでもいうような掠れた声で、名前を呼ばれ執務室に連行され歌を強要させられたことにパニックに陥ったあとだった。

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