言葉の真意が分かりません


ふぅ、と息をついて、いつもの帰宅時間までに仕事が終わったことに安堵する。荷物をまとめてから適当に同僚に挨拶をして仕事場を抜け、WSの正面玄関に止まった迎えの車に乗り込む。
今日一人で帰る理由。
それは今日は雨丸は途中で用事があるとか言って早退してしまったからだ。

雨丸が自分にそう告げた時、蜜歌と真音も市街の巡回に行くとか適当な理由を付けて外に出て行った。
ちなみに蜜歌は巡回する気はないらしく、ただ真音と二人で出かける口実に使ったらしい。これは蜜歌がこっそりと耳打ちしてきた内容だ。
きっとあの様子じゃあ真音は全く知らないのだろう。そして街に着いた途端、巡回と称して買い物やらをする蜜歌に文句を言うも、「これも巡回の一環だよ、真音?」とか言いくるめられるのだろう。

長い付き合いだけあって言動が全て予想できる。
せめてやるからには見つからないようにしてほしいものだ。上層部から怒られるのは班長である自分なのだから。

そんなことを考えているといつの間にか家に到着していた。
運転手に軽くお礼を口にして、めぇが待っているであろう家の中へ入る。

「ただい……ま…」
呆気に取られて見つめた先には。
「彩花、おかえり」
可愛らしい、それもとびっきり可愛い笑顔でめぇが出迎えてくれる。
それはいつものことだから驚くことではないのだ。
驚いたのは別のことで………

視線をそれに移す。
めぇが着ているのは普段着などではなく…何故かフリルがあしらわれたエプロン。
「めぇ、それ、どうしたの?」
「今日はオレがご飯作ったの」
えへへ、と可愛らしく微笑まれると仕事の疲れが取れてくるようだった。

「じゃあもう出来てるから!」
腕を引っ張られて、ダイニングへ向かう。
ダイニングテーブルの上には出来立てのオムライスが一皿。
表面が焦げてたり、卵が敗れたりしてるけど、そんなのは今は微々たることだ。愛嬌で済ませられる。
それより重要なのは、そのオムライスの上にケチャップで「彩花」と書かれていることが重要なのだ。おまけにハート付きの。

「めぇ、これ…」
むず痒さに頬が紅潮しているのが自分でも分かった。なんだか恥ずかしい。

「オレの自信作!じゃあ彩花はそこに座って…、オレはここね」
そう言って彩花の手をひいて椅子に座らせて、自分はその隣の席に座る。

「はい、あーん」
スプーンを器用につかってオムライスを一欠けら掬い上げ、彩花の口元まで持って行く。
雨丸は恥ずかしそうに頬を染める彩花を嬉しそうに見詰める。

「あ、あやはな」
「ん?」
「ついてる」

あ、と思った瞬間、めぇの顔が近づいてきたかと思うと頬に付いているケチャップごと頬を甘噛みされた。
「っ、」

くす、と笑いを漏らしたのはめぇで、こちらを真っ直ぐ見詰めると、心底楽しそうにこう言った。


「美味しそうだったから、つい」

真意を計りかねて首を傾げると、困ったように頬に付いたままのケチャップをぺろりと舐め上げた。








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これ、注意書きいらないよね…
彩花様を誘惑するめぇです。←
かなり昔に書いて放置だったので、書き上げてみました。
本当はどういう経緯か忘れたけど首に甘噛みで彩花様どきどきさせてやろうドッキリ大作戦!で蜜真も絡んでいた気がします…
うーん、昔の自分は分からない。
リゼ