ふんふーん、と鼻歌を歌いながらスキップ。

ああ、もうすぐか。
これでもうこそこそとしないで済むってものだ。

「えーと、どこだっけな?」
新たな始まりの場所がこんな辛気臭い所なんて非常に不本意なんだけど。

そういった場面には花の咲き乱れる草原、もしくは紅い血で彩られた華々しい空間が最適だって相場は決まっているハズだ。

まぁ汚れるのは嫌だから後者は今は遠慮したいが。
大切な人との再開は、やっぱり綺麗な自分で臨みたいから。

そういえば、と雨丸は思考する。

WSの人達はどこいったんだろうねぇ?
高層ビルなのだから逃げ出してなければまだビル内にいるはずなんだけど…
他の縁のメンバーが相手してたりするのかな?
作戦とかはあんまり興味なかったから聞き流しといたけど、よく考えれば聞いといた方が良かったかも。

でも探しに行くのは面談臭いから、さっさと彩花に会いに行って逃げちゃおうっと。
今頃は真音も記憶を取り戻してるはずだし。
まさかあそこまで協力しといて失敗はないだろうからね?

そんなことを考えながら歩いていると、目的の場所に着いたようだ。

「ここだね。見つけた」

『音声照合します。キーワードは?』

「ENISHI」

カチャリと目の前のドアが音を立てて開いた。

「彩花っ!!!!」
腕を広げて待っていたその人に飛び付くようにして抱き着く。

「めぇっ!!!!」
飛びついた雨丸を優しく受け止めて、きつく抱きしめた。

「んー、やっぱり彩花の匂いは落ち着くー…」
「僕も」
「だよね」

くすくすと笑い合えばそれまで二人を隔てていた時間の壁が、ぼろぼろと崩れ落ちていくようだった。


抱き合ったまま耳元で囁きあう。
本題について。

「…このままここでゆっくりしてたいけど」
「時間があんまりないよね」「だよねー、残念」

「ようやく、ですか」
「全部、ね」

「「迎えに行こうか」」

互いの身体に絡めていた腕を解き、手を繋いで部屋を出る。

カツン、と重なった足音が薄暗い廊下に余韻を残して消えた。
リゼ