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「ははっ!!なんていい日なんだろうね!!WSも堕ちたもんだよ、僕らの真の目的を知らないでこんなことをするなんてさ!!」
「くふっ、そうですね、間抜けですよね」
モニターに映し出された映像を見ながら二人の青年がくすくすと笑いを漏らす。顔は笑っているのに、空間は執念や憎悪の感情で満たされているかのようだ。
「知っててこんなことをしたならどうします?」
「それなら返り討ちにしてやるよ」
「そうでしたね」
「「鳥は檻から出された」」
「後は?」
「取り戻すだけ」
くすくす…、と笑いは止まらない。
目的の人物達はすぐそこにいたのだから。
「お前、名前なんていうんだ?」
群がっていた人形集団を始末し、建物内に突入する。自分達はさっき暴れまくったから、今度は一番後ろをのこのことついていくというつまらない役回りだ。
「俺?俺は雨丸だよ!」
「そうか。オレは真音だ」
「真音、さっきはすごかったよ!まさか俺について来れる人がいるとは思わなかったもん」
人懐こい笑顔と、年齢よりも幼い話し方。
なにか、頭の片隅に引っ掛かる気がした。
「あー…お前が楽しそうにしてたからつい、な」
けらけらと声を立てて笑えば、雨丸もなるほどね、と笑った。
自分達は歩いて進んでいたため、気付けば周りには仲間の姿はない。ひたすら暗い廊下が延びているだけだ。
笑い声が廊下の壁に反響して耳障りな音へと変容していく。知らず眉をひそめた。
その時、雨丸の足音が急に途切れた。
真音は立ち止まった彼を振り返る。
「どうした?」
顔が伏せされているため、表情は読み取れない。
「ねぇ…」
いきなり低くなった雨丸の声にビクリとする。
急に周りの空気が冷えた気がして、ぶるりと鳥肌が立った。
「…真音ってば何で自分が戦うことが好きか覚えてる?」
「覚えて…?」
変な言い方だ。
「いや、元々好きなんじゃないのか?性格的に」
それの他に何があるというのだろうか。
本格的に考え始めた時に、
「ははははははははっ!!!!これは傑作なんじゃない!?オレと違ってさっ!!もうこんなの面白すぎるよねっ!まさか動きがないと思ったら本気でなくしてるなんてさっ!!」
狂気に満ちた笑い声を上げる雨丸を目の前にして、一歩も動けなかった。
本能的には、逃げろ、今の自分じゃ相手にしてはならない、と頭の中で警鐘が鳴り響いているのに、
「……今の自分……?」
「あ、あれ、どうしたの?思い出したの?」
未だに笑いながら目尻から涙を拭き取る。
「じゃあ、お話はこれくらいにして。」
「行こうか?」
手を引かれ、脇にあった通路に入る。
何故かは分からないが、振り払おうという気はなかった。
ただ、これで正解なのだという妙な確信だけが残っていたのだ。