淡恋【19】
「まったく…仕方ないですね。」


やれやれと肩を竦め、「一くんは、言わないだろうし…教えてあげますよ。」と苦笑した。


「一くんが、AV女優の仕事をしてるのは借金返済の為ですよ。」


総司の言葉に無言で眉を吊り上げる。


「大学一年の冬に、いきなり一くんが退学したでしょ。


一くんの両親が自殺したんですよ。


そして、突然の両親の死に呆然としてた一くんの前に、借金取りが現れて返済を迫ったんです。


一くんは、そこで初めて両親に借金があった事を知ったらしいんですけど…。」


¨心配をかけたくなかったのかは、わかりませんけど…狡いですよね。何も知らせず、一くんをたった独りにするなんて…。¨


どこか嘲るような笑いを浮かべ、ポツリと呟く。


「一くんに残されたのは、500万という借金だけ。


だけど、ただの学生の一くんにはそんな大金払えるはずがない。


だからですよ、AV女優をしてるの。


借金取りと事務所が繋がってるらしくて、風俗で働かせるよりもって事になったらしいです。」



すべて話終わったのか、ふぅっと息をつく。


「ちょっと待て、財産を相続しなければ斎藤に借金を返済する義務はないはずだが、それはどうなってるんだ。」



「財産なんて、ほとんどありませんでしたよ。でも呆然として気づいた時には遅かったんです。基本、相続放棄が出来る期間は3ヶ月らしいですね…それを知った時には過ぎてましたよ。」


苦々しい顔で首を横に振り、溜め息をついた。


「一くん……真面目で、しかも潔癖なところがあるでしょ?だから、自分自身を凄く卑下するっていうか嫌悪している感じがするんです。どこか投げやりなところがあるんですよね。」


困った子だよねぇと、どこか慈愛の含んだ眼差しで苦笑を浮かべた。


「もう一度聞きます。土方さん、どうするつもりですか。同情とかじゃなく、一くんを守る気…あります?同情とかはいりません。そんな気がないなら、この話は忘れて一くんには関わらないで下さい。」


挑むような眼差しで見てくる総司に、ふっと笑みを返す。



「たりめぇだ。悪かったな、総司。」


すくっと立ち上がると、「今度、奢って下さいねー」とへらりと笑った総司がヒラヒラと手を振っていた。



「ああ。」


ニヤリと笑みを返すと、外へと駆け出した。



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