豆まき
暦の上では翌日に立春が控えているとはいえ、まだまだ雪深い寒い日々が続く。
「母上、これは何ですか?」
「なにー?」
興味津々とばかりに升に入った炒ってある大豆を、しげしげと見つめる二人の子供に、ふっと笑みを浮かべる。
「今日は節分だからな。」
「せつぶん?」
「ちゅぶん?」
コテリと同じように首を傾げる雪夜と桜に、くすりと笑うと「そうだ、節分だ。」
「豆を¨鬼は外、福は内¨と言いながら蒔くんだ。」
「…鬼しゃん、さむいさむいね。かわいしょう…」
しゅんと落ち込んでしまった桜に¨そうだね、可哀相だね¨と慰める雪夜。
このままでは、¨節分=悲しい日¨になってしまう。
困ったと眉を寄せ、子供達に何と説明すべきか頭を悩ませる。
「鬼つーのは、病気や怪我のこった。一年を病気や怪我を負わずに過ごせるようにって豆をまくんだ。」
「父上!」
「とーしゃま!」
帰宅した土方にぱあっと顔を輝かせ駆け寄る雪夜と桜を見て、ほっと胸を撫で下ろす。
「父上、お帰りなさい!」
「とーしゃま、しゃい!」
抱き上げてもらい、きゃいきゃいと嬉しそうにはしゃぐ子供達に優しく笑うと、安堵に顔を綻ばす一に近づく。
「そうか、今日は節分だったな。」
笑みを浮かべると、そっと子供達を畳みの上に降ろすと、升に入った大豆の山を見る。
「はい。」
コクりと頷き、そっと升を持つと土方に手渡す。
「豆まき、お願いできますか?」
「ああ。ほら、お前ら豆をまくぞ。」
「「はぁーい!」」
元気よく返事をし、トテトテと父親を追う子供達にふわりと笑うと、夕餉の膳を運ぶべく立ち上がった。
「「おには外(しょと)ー!ふくはーうち!」」
楽しそうな元気な子供達の声が響き、優しい顔で見守ってるであろう夫の姿とはしゃぎながら豆をまく子供達の姿が思い浮かび、くすりと幸せそうに笑みを浮かべる。
今年もまた、何事もなく幸せに過ごせるように。
無病息災
家内安全
End
私の実家では、鬼に投げずに炒った大豆を家の外に二回、中に一回『鬼は外、福は内』と言って、祖父(家長)が投げてました。祖父が亡くなってからは父(居ない時は弟)が。女は投げない感じだったので、斎藤さんには別行動を取ってもらいました。恵方巻なんて、社会人になって関東に来てから知ったぜ(笑)
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