願わくは貴方と共に【44】
全部、思い出した。
昔、自分がどのように生き、どのように死んだか。
そして誰を愛したか
やっと思い出した。
「左之……。歯を食いしばれ」
「は…?」
静かな声にポカンとしていると、頬に衝撃が走った。
「遅い。千鶴が、どれだけ寂しい思いをしたと思っている。」
「あ…あぁ…」
憮然とした表情で片手を摩る朔の姿にやっと、頬を叩かれたのだと理解した。
「で、あんたはこの世でも千鶴と共に生きる気なのだろうな。」
腕を組み見据える朔は威圧感たっぷりで、自然と左之も気を引き締める。
「おう。千鶴以外、もう考えられねぇよ。」
「……傷つけたりしたら、俺も薫も容赦はしない。覚悟しておくんだな。」
じっと睨むように見据えてくる朔に、ふっと笑みを浮かべる。
「それは勘弁だな。」
「ふん。千鶴なら、体育館で剣道部の見学をしてる。」
「……風間といるってのは」
「嘘だ。」
ケロリと答える朔にガクリと項垂れると溜め息をつく。
「さっさと千鶴のところに行くがいい。いくら新八がいるにしても、見知らぬ場では心細いだろうからな。」
「あ、ああ。すまねぇな。」
朔の肩をポンと叩くと体育館に向け走り出した。
「…やはり、グーで殴るのだったか。」
呟きは左之助には聞こえる事はなかった。
Next
- 45 -
戻る