願わくは貴方と共に【40】


「風間が謝っただと…!」


有り得んとばかりに目を見張り絶句した朔に、千鶴は困ったように笑った。


「えっと、本当です。斎藤さんにも迷惑をかけたとおっしゃっていました。」


「ふむ…」


¨あの¨風間が謝った


傲慢で俺様な風間が!?


あまりの事に何か裏があるのではと疑ってしまう。


(頭でも打ったか…?)


しかし、これで一つ問題が解決した。あとは左之次第だ。


「まぁ…厄介事がなくなったのは、喜ばしいことだな。」


「はい。風間さんも…話してみたら意外といい人でした。」



ふにゃりと笑う千鶴に、複雑そうな表情を浮かべる。


朔には、どうも風間と¨いい人¨という言葉が結び付かない。それは勘違い甚だしい傲慢な態度や、幕末の頃の因縁などが原因となっている。


(ああも人を侮辱し斬り付けられてはな…)


溜め息をつくと、向かいでにこにこ笑う千鶴が目に入り、苦笑を浮かべた。


せっかく千鶴が自分で風間と向き合い解決したのだ。過去の余計な物事は考えない事にしよう。


「千鶴…頑張ったな。」


手を伸ばし、よしよしと頭を撫でてやるとほわりと笑みを浮かべた千鶴が抱き着いてきた。


「えへへ。何か、自信がつきました!私、明日こそ左之助さんとお話しに行きます!」



にこりと笑い決意をあらわにする千鶴に、「そうか、頑張れ。」と微笑み頭を撫でた。


記憶があるのとないのでは、こうも違うのかと思う。


左之は記憶が無い故、ぐたぐたと悩み千鶴から逃げているような態度であるのに対し、千鶴は躊躇いながらも積極的に近づこうとしている。


(ただ左之がヘタレなだけか?)


左之助が聞けばショックを受けそうな事を考えていると、


「なので、勇気を出すために今日は一緒に寝てもいいでしょうか?」


「ああ…勿論。」


このままの状況だと、千鶴に対する左之助の立場はかなり危ういなと、ぼんやりと考えながら千鶴を抱きしめた。




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