願わくは貴方と共に【3】


千鶴の席は窓側の後ろにあって、周りを背の高めの人間が囲むように配置されてることもあり、教師から見えにくい状態だった。


それでも普段は、真面目に授業を受けているのだが今日だけは別だった。


教師にバレないようにヒヤヒヤしながら携帯を取り出し、ふにゃりと笑みを浮かべる。



昼休みに届いた朔からのメールに、ほこりと胸が暖かくなる。



¨今日、部活が休みになった故、よければ買い物にでも行かないか?¨



朔らしい、用件のみの簡潔な内容のメールに、喜びのあまり絵文字まで使って返信をしてしまった。


早く授業終わらないかなぁ…



わくわくと放課後の事に思いをはせ、授業の終わりを待った。






「朔さん、お待たせしました!」

HRを終え急いで校門に向かうと、すでに朔が待っていた。


「いや、俺も先程来たばかりだから大丈夫だ。」


走ってきたせいで息を荒げる千鶴に苦笑を浮かべ、頭を優しく撫でる。


「いきなり誘って悪かったな。何か用事があったのではないか?」

「いえ!特に用事はありませんし、朔さんからのお誘い以上に大事な用事はありません!」


にこにこと笑みを浮かべ告げられた言葉に、こそばゆい思いを感じそっと顔をそむける。


「…ならば行くぞ。」


「はい!」



嬉しそうに朔の後をひょこひょことついて歩く千鶴は、まるで雛のようであった。



そんな懐かしいともいえる光景を、ひそりと眺める謎の人物がいた事を二人は知らなかった。








朔と二人、やって来たのは近くにある大型ショッピングモールだった。


「どうしたんですか、朔さん?」


「いや…」


ショッピングモールに着くなり、きょろきょろと辺りを見回す朔に不思議そうに首を傾げる。


「あ、いた。千鶴、行くぞ。」


「え、あ、はい。」


朔に手を引かれ連れて行かれた先では、何故か土方と左之助が立っていて訳が分からずに立ち尽くす羽目になった。


「すみません、お待たせしました。」


「たいして待ってねぇから、大丈夫だ。それより千鶴に、何も言わなかったのか?」


千鶴の様子を見て土方が、苦笑を浮かべ肩を竦めた。


「あ…。」


¨うっかりした¨とばかりに目を見開いた朔は、慌てて千鶴に向き合い説明するべく口を開いた。


「実はな、俺達だけでは色々と面倒な事もある故、土方さんと左之に一緒に来てもらう事にしたんだ。すまない…言うのを忘れていた。」


すまなそうに、しゅんと肩を落とす朔にハッと我にかえった千鶴は、慌てて慰めにかかる。


「だ、大丈夫です!少し驚きましたけど、四人で買い物も楽しそうですね!」



笑みを浮かべ告げる千鶴に、ほっとしたように顔を緩めると朔は、
「ありがとう」

と言って、ちらりと土方の方を見て小さく頷いた。




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