願わくは貴方と共に【36】
「土方さん、相談があるんだが…」
定時になり、早い者は既に席を立ち帰宅し始めている。
斎藤に宣戦布告されてからというもの、その事ばかりが気にかかってしまい授業にも身が入らなかった。
考えても結局、壁にぶつかってしまい解決しない事を悟った時には、いつの間にか定時になっていた。
このままでは埒がない。同じような立場である土方ならば、いい助言が貰えるかもしれない。
「ん、ああ…何だ。」
パソコンから目を離し、見上げてくる土方に苦笑を浮かべる。
「わりぃ、此処じゃちょっと…。」
苦笑し肩を竦める左之助を一瞥すると、パチリとパソコン画面を消すと立ち上がる。
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「で、相談ってのは何だ。」
居酒屋の個室にゆったりと腰掛け、ニヤリと笑う様子からして、土方は既に左之が相談しようとしている内容を分かってるらしい。
「あー…その、な…土方さんは、斎藤との事、悩まなかったのか。」
言いづらいのをごまかす様に、ガシガシと頭をかきながら問う。
「悩んだに決まってんだろ。何せ、相手は生徒しな。」
烏龍茶を呑みながら苦笑を浮かべ、肩を竦める。
「よりによって、何で9才も下の奴に惚れたのかって、気の迷いだと思いたかったさ。」
ひょいっと肩を竦め苦笑をする土方に、些か驚く。
普段の道場等での様子やストーカー事件からは、そんな風には見えなかった。
「…何で…斎藤と付き合う事にしたんだ。」
「もう¨二度と¨手放したくなかったからだ。左之、お前が千鶴との年の差が気にかかってんのも理解できる。だがな、大事なもんを見失うなよ。」
真剣な眼差しで見てくる土方に息を呑む。
「アイツに…斎藤に宣戦布告されただろうが、失いたくないと思ったら覚悟を決めるんだな。」
(というより、覚悟を決めてくれねぇと些か面倒なんだよ。)
という土方の心の声を左之助は聞くことはなかったが、土方の言葉は左之助に重くのしかかった。
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