願わくは貴方と共に【26】

「一君、土方さんと付き合うようになって性格悪くなったんじゃない?わざとでしょ、アレ。」


ぎこちなく会話を交わしている千鶴と風間を少し離れた場所で見守りながら、ニタニタと笑みを浮かべる総司に視線を移す。


「…何の事だ。」


「さっき、わざわざ左之さんが見てる事を確認してから千鶴ちゃんにキスしたでしょ。しかも変態と話すようにお膳立てした上で…。」


くつくつと笑う総司に、くっと口角を引き上げニッと笑みを作る。

「風間の事は、いっそ話を付けてしまった方がいいと思ってな。きちんと千鶴の意思を伝える必要もあるしな。それに、それを見て左之に変化があれば万万歳だ。まぁ、キスはちょっとした揺さぶりだな。」


「なるほどねー。まぁ、見事に上手くいったようだね。一君が、千鶴ちゃんにキスした時の左之さんの焦り具合は面白かったなぁ。」

愉快げに笑いながら、険しい表情で千鶴と風間を見ている左之を見遣る。


「ふむ。唇にしようかと迷ったが、やはり額にしておいて正解だったか。」



至極真面目な顔で言われた言葉に、微妙な表情で朔を見遣り総司はそろそろと口を開く。


「ねぇ…。君と千鶴ちゃんって、普通にキスとかしてるわけ?」


「頬とか額には、良くするな。小さい頃からの癖は中々治らんな。」


しみじみと語る朔に、『昔は…』なんて一瞬遠き日の思い出に浸りかけた。


「…一体、どうなって風間が此処にいるんだ。」


後ろから土方の声が聞こえ振り向くと、スーツ姿で煙草を加えた土方が訝しげな表情を浮かべ立っていた。


「土方さん、お疲れ様です。」


嬉しそうに笑みを浮かべる朔の頭を撫でると、「で、どういう事だ。」と説明を求めた。


「一君が、連れてきたんですよ。」

その言葉に眉をしかめ、朔を見遣る。


「来る時に絡まれまして…。このまま、ズルズルと今の状況を続けるのもどうかと思いまして…」


「で、連れてきたのか。」


「はい。風間と話を付けてしまった方が良いと思います。」


「話が通じるかは分かりませんけどねー」


笑いながら告げる総司に溜め息をつくと、何とか会話をしているように見える千鶴に視線をやった。



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