願わくは貴方と共に【21】
「出たのか、アレが…」
「うーん…その内、出てくるだろうとは思ったけど…」
「「白い学ランに薔薇はねぇな(ないね)」」
薄桜学園高等部の屋上にて、土方、総司、朔は昼食をとりながら昨日の千鶴の話を報告していた。
「ていうか、アレって僕らと同年代なわけ?てっきり土方さん達くらいの年だと思ってたんだけど。やだな、アレと年が近いとか最悪なんだけど。」
「そういえば…。見た目でいえば、俺も年上だと思っていたが…幕末とあまり変わってなかったし。」
「…まぁ、とにかく無事で良かったな。」
何だか、違う方向へと脱線しつつある総司と朔の会話を遮り、一先ず千鶴の無事を喜ぶ。
「天霧と不知火のお陰かと…」
「あの二人も苦労するよな、アレのお守りとは…。」
「僕、その二人とは面識ないけど同情するね。」
はぁぁっと三人の溜息が重なった。
「それと…左之の事ですが、少し様子を見ることにします。」
「一くん?」
土方と総司は訝しげに朔を見遣る。つい先日まで、左之助の記憶を思い出させようと思案していたのを知っている分(得に土方は)、何がどうして心境を変えたのか疑問だ。
「俺は、少し焦り過ぎてました。左之が中々思い出さなくて、千鶴の悲しい表情を見ると、居た堪れなくて…。でも、俺のその焦りが千鶴を苦しめていた…そんな気がします。」
しゅんと肩を落とし語る朔に、土方は慰めるようにポンと頭を撫でる。
「お前だって、千鶴を思っての事だ。あんま気を落とすんじゃねぇよ。」
「そうそう。それに一くんが強引に、左之さんを千鶴ちゃんの護衛に付けなきゃ、たぶんもっと遅くなるんじゃない?」
「ああ。今回のは、いい判断だった。」
そっと甘えるように土方に身を寄せ、小さくコクンと頷く。
「…ありがとう。」
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