願わくは貴方と共に【1】
幼なじみである斎藤朔が、とうとう前世から慕っていた相手ー土方歳三との恋を実らせてから、早三ヶ月ほど立った。



昔から何かと世話になり、現世では幼なじみとして姉のような存在である斎藤が、幸せになってくれるのは、千鶴にとっても嬉しい事だ。


少々、大好きな姉が遠い存在に感じてしまった時もあったが、何かと朔は構ってくれるし、土方も会った時には昔と変わらず接してくれる。


だから、佐之助との事で少し寂しいと感じても、誰にも…ましてや朔や土方には余計な気を遣わせてしまいそうで、言えずにいた。




「…どうした?何か悩み事か?」


優しい心配そうな声に、ハッと顔を上げると、心配そうに眉をひそめ朔が千鶴を見ていた。


「い、いえ。何もありません。」


きゅっと掛け布団を握りしめると、小さく首を横に振る。


「…千鶴、俺には言えぬ悩みか?」

朔は読んでいた本を閉じ、ベッドヘッドに置くと、ポンッと千鶴の頭に手を乗せ、やわやわと撫でる。


そんな朔の仕草に、心がじーんと暖かくなる。


最近、週末に土方の下へ行く事が多くなった朔に、少々寂しさを覚え、こうして一緒に寝て甘える事が増えた。


それでも朔は、嫌な顔をせず受け入れてくれる。



薫にも呆れられてしまうし、自分でも甘えてばかりいると嫌になってしまう。


「…朔さんに、甘えてばかりだと思って…。自分でもダメだとは思ってるんですけど…。」



しゅんと器用に眉を八の字の形にして落ち込む千鶴に、くつりと笑う。


「別に、いいのではないか?お前は、あまり人に頼ったり甘えたりする性格ではないし、俺に甘えるくらい構わないのではないか?」

柔らかに微笑み小首を傾げる朔に、思わずぎゅーっと抱き着く。



「そんな事いうと、ずっとずーっと甘えちゃいますよ…?」


「臨むところだ。」


ゆっくりと髪を梳くように撫でてくる、朔にふにゃりと笑みを浮かべる。



「さて…それで、何を悩んでいたのだ?」


「えっと…言った通り…」


「甘えてばかりとだけ悩んでいたんじゃないだろう?」


言い逃れは許さないとばかりに、じっと見られては千鶴は白旗を上げるしかなかった。



「その…佐之助さんの事で少し…。朔さんには、いっぱい甘やかして貰って、土方さんにも色々と気を遣って頂いてるのに…たまに寂しくなってしまって…」


甘えるように朔の肩に頬を擦り寄せ、しゅんと思いの外弱々しくその言葉は響いた。


「千鶴…。」


「えへへ…でも、朔さんが側にいてくれるおかげで、すぐに元気になりますよ!」


空元気ともとれる明るい声を出す。


そんな千鶴を気遣ってか、朔もそれ以上は何も言わずにいた。





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