願わくは貴方と共に【16】

部活が終わり、すっかり暗くなってしまった帰り道。


朔は土方に送って貰っている最中、少々難しい顔で考え込んでいた。


「心配か?」


助手席に座る朔をチラリと見遣り、苦笑を浮かべながら問い掛ける。


朔が過保護なまでに大切にしている千鶴の事で悩んでいるのは分かりきった事なのだが、少々複雑な気分になるのは自分が狭量なのだろうか。


「いえ…。ただ、風間という存在を如何に有効に使えば、左之が思い出すきっかけになるかと…」


コテリと首を傾げ無防備に見つめてくる姿は、とても可愛らしいのだが…言ってる事は結構えぐい。


「……とりあえず、左之助がいる前に風間が現れて、いつものような態度で千鶴に絡めばいいんじゃねぇか?」


ついつい遠い目をしつつ、いつもの駐車場に車を止める。


少しでも長く一緒にいる為、ここからは歩いている。


車は停止してもお互い降りる事なく話は続く。


「そう、ですね…。それでもダメなら…いっその事、千鶴には我慢してもらって、風間とデートでもさせましょうか…。」


「おい、それはやり過ぎじゃねぇか?それに千鶴が嫌がるだろ。」

いくら何でも相手が風間とは…。余計、勘違いして厄介な事になりそうだ。


「…ですね。」


はぁぁっと溜め息をつき肩を落とす朔に、土方は苦笑しながらポンポンと頭を撫でてやる。


「まともに接触するようになったんだ。焦んなくても、そのうち思い出すだろうよ。だから、あまりお前は思い詰めるな。」


そっと朔に覆いかぶさるような体勢になると、額に軽くキスをする。


「……そこじゃ、ダメです。」


恥ずかしげに頬を赤らめ目を伏せながらも、ハッキリと意思を伝える。


そんな朔に、くつりと笑うと朱く色づく唇に己の唇を重ねた。



「…これで満足したか、お姫様?」

こつりと額を合わせ、ニヤリと笑う土方の首にスルリと腕を回し、ぎゅっと抱き着くと「もう一回…」と小さな声でねだる。



本当、この年下の恋人には敵わない。可愛い恋人の願いを叶えながら、内心苦笑しつつも幸せを感じた。




Next
- 17 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ