願わくは貴方と共に【12】


日曜、朔が土方のとこから帰宅したのを見計らい千鶴は斎藤家の朔の部屋を訪ねた。


「朔さん、おかえりなさい」


「ああ、ただいま。」


まだ帰宅したばかりだったのだろう、コートをハンガーに掛ける手を止め薄く微笑んだ朔を見て、千鶴はふにゃりと笑った。


「あの変態には会わずにすんだか。」


「はい!」


パタパタと朔に駆け寄り、にこりと笑う。


「…何か、良い事があったか。」


くすりと笑い、ポンッと千鶴の頭を撫でる。


「えへへ…左之助さんと、たくさん話せました!」


本当に嬉しそうに報告してくる千鶴に、朔は微笑ましげに見つめる。


「朔さん、ありがとうございます!」


満面の笑みを浮かべ礼を述べる千鶴に、コテリと首を傾げる。


「俺は、特に何もしていないが。」

「そんな事ないです!左之助さんに、朔さんがお願いしてくれたから、一緒にいられました!」


ほわほわと笑う千鶴に、朔は物凄く癒された気持ちになった。


「千鶴…」


ぎゅっと千鶴を抱きしめ、深く息をつく。


「朔さん?」


「…左之にやるのが惜しくなってきた。」


こんなに、こんなに癒しなのに


むっとした表情でぎゅっと千鶴を抱きしめると、くすくすと軽やかな笑い声が聞こえた。


「大丈夫です!私、朔さんの側にいます!」


すりすりと朔の首筋に額を擦り寄せ甘えると、ぎゅーっと抱きつく。


「千鶴!」


「朔さん!」



キラキラ


キラキラ


まるで舞台に立つ恋人達のように、感極まった様な表情で抱き合っていた。



ここに第三者がいれば、『お前ら、何馬鹿な事やってんだ』とツッコミを入れてくれたかもしれないが、幸か不幸かそこには二人しかいなかった。




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