願わくは貴方と共に【11】
オレンジ色の夕日が照らす中、左之助と千鶴は歩いていた。
『千鶴を、よろしくお願いしますね。』
と、千鶴の姉のような存在の斎藤は左之助にそう告げると、自分はあっさりと恋人の家へと向かっていった。
「なぁ…厄介なストーカーもどきって、どんな奴なんだ?」
ストーカーは斎藤も被害に遭ってるし、警察に相談した方がいいんじゃないかと思うんだが……。
ポリポリと頭を掻きながら、控え目な態度で隣を歩く千鶴に聞く。
すると千鶴は困ったような顔で苦笑を浮かべた。
「ええっと……ストーカーというか、変態?ちょっと、面倒な方に目を付けられてしまって…。でも、警察に相談するほどの事では……。ただの、頭の弱い人ですし…。」
あまり人の事を悪く言う事のない千鶴が、そんな風に表現した事に内心驚いた。
何となく、怒ったり、人を嫌ったりするような事とは無縁のような印象を抱いていたので、千鶴が曖昧にだか示した嫌悪に、¨この子に、ここまで言われた奴はどんだけ嫌な奴だ¨と興味が湧く。
「………すみません、わざわざ送っていただいて。あの!ご迷惑でしたら、私、一人で大丈夫ですから!」
ついつい無言になってしまった左之助に不安になったのだろう、へにゃりと眉を下げ訴えてくる。
「いや、変な奴に狙われてるって知ってるのに、放っておけねぇよ。何かあったら、斎藤にきつーく叱られそうだした。」
苦笑を浮かべ、ポンポンと千鶴の頭を撫で「それに、迷惑なんて思ってねぇから、気にすんな。」と笑うと、千鶴もにこりと笑った。
その時、一瞬だけ浮かんだ切なげな表情は気のせいだろうか。
「ありがとうございます。朔さん、怒ると恐いですよ。」
「だよなぁ…。何となく、そんな感じがするわ。」
くすくすと笑う可愛らしい声と、くくっと愉快げに笑う低い声が響いた。
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