願わくは貴方と共に【10】
いきなり受けた暴挙による失神から回復した左之助は、周りの奇妙な目に身じろいだ。
最近、疑問に思う事がある。
新八や平助達の態度だ。
たまに、意味のわからない内容を懐かしげに話しているのだ。
土方達は昔からの知り合いだし、結構共有の思い出とかもあるはずなのだが、そういう部類のものではない。
何より、今年になって知り合ったはずの斎藤と雪村が一緒になって話しているのだ。
なのに俺が近づくとピタリと止めてしまう。これを疑問に思わないほど鈍くもない。
ああ…何だってんだよ。
「原田先生…お願いがあるのですが。」
目の前に立つ年下の少女に、ひくりと頬が引き攣った。
「な…何だ。」
「しばらく千鶴を家まで送って欲しいのですが…。」
淡々と話す斎藤に、ポリポリと頭をかくと困惑に微苦笑を浮かべた。
「ちなみに、理由は?」
「少々厄介なストーカーもどきが出現したので。行きは俺や薫が共にいるので何とかなりますが、帰りはそうもいかないので。」
¨薫は委員会や部活がありますし、俺も似たような状態ですので¨
「はぁ…まぁ、構わねぇが。でもよ、俺じゃなくてもいいんじゃないのか?」
そう言った途端、斎藤の表情が変わった。うっすらと口元を引き上げ笑みの形に作りながらも、冷ややかな目が左之助を見据えている。
「お願い、できますよね?」
妙に、こちらを圧迫するような声で¨断る¨なんて言おうものなら、報復にとんでもない事をされそうな恐怖を感じた。
「あ、ああ…」
この年下の少女には逆らってはならない
そう悟ると、了承した。
(斎藤………お前、性格変わったな…)
ふと頭の中でそんな言葉が過ぎり、首を傾げる。
性格が変わったと、断言できるほどの付き合いを斎藤としていただろうか。
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