願わくば貴方が幸せであることを【1】
ずっと想いを殺していた。

伝えてはならぬと…


剣に生き死ぬ為には必要のない感情だと


何より、伝えて貴方に負担をかけたくはなかった。

いつも新撰組の為、重荷を一人で背負い抱え込んでいたから。



…本当は、ただ恐かったのかもしれぬ。


拒絶されてしまった後、己がどうなるのか



弱かった…。


弱かったのだ、自分は。


だから、命が消えるその時になって後悔している。


別れる時、想いを告げればよかった。きっと貴方は困るだろうが、それでも《仕方ねぇ奴だ》と笑ってくれたのではないか。


ああ…そういえば、貴方の笑った顔など暫く見ていなかった。




いつも眉間に皺を寄せ、難しい顔していた。本来は、表情豊かな人であったのに…。








願わくば貴方が幸せであることを…
















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西暦2010年


激動を駆け抜けた幕末から、既に150年もたった世に、新撰組三番組組長 斎藤一は新たな人生を歩んでいた。





「む…もう、こんな時間か。」


支度をせねば間に合わぬな

そう呟くと、素振りを止め竹刀を片付ける。


現在の時刻は早朝6時30分


やっと、ある程度の人間が起き出す頃であろう。


しかし、斎藤はあの頃の癖なのかそれよりも早く目が覚める。


その為、起きてから暫くは竹刀を振るっている。



その辺りは、あの頃とは変わらぬなと思いながら、家に入り着替える為に部屋に戻る。



「…はぁ。」


毎日、着替える時や風呂に入る時は憂鬱な気分になる。



何故ならば、幕末のあの頃とは余りにも異なる身体を思い知らされるからだ。



以前よりも細く、どんなに鍛えても、柔らかさを保つ身体。何よりも男にはあるはずのない胸元にある膨らみ…。



そう、斎藤は今世では【女】として生を受けている。




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