頭に疑問符を浮かべながら、そろそろと視線を上にやり、ピシリと固まった。
(な、何故、このような状況に！？)
パニックに陥った頭で、慌てて離れようとするが、ガッシリと抱き込まれ動く事ができなかった。
羞恥に顔を赤くしながら、必死にこの状況の原因を思い出そうと記憶を辿り、さぁぁっと顔を真っ青にする。
(お…俺は、何てはしたない真似を…)
一緒に寝て欲しいとねだり、しかも自分から…あんな…
がっくりと脱力し、あまりの自分の行いに嘆いていると、ぎゅっと抱き寄せられた。
「ひ、ひじかたさん？」
起きたのだろうかと顔をあげ土方を見ると、いまだ安らかな寝息を立てていた。
やはり、美しい人だと思う。綺麗な紫色の目は隠れてしまい見ることが出来ないが、端正な顔にかかる漆黒の髪…羨ましいというのを通り越し、ただ何時までも眺めていたいと思う。
ぽぉっと頬を赤らめ土方に見惚れ、ついつい艶やかな髪に触れる。
自分の髪のように柔らかくはないが、滑らかで指通りがいい。
(やはり、羨ましいな…)
何度も、夢中で髪を撫でたり指に絡めたりしていると、伸びてきた腕に捕われる。
「…随分と楽しそうじゃねぇか。」
眠そうに目を細め、低く掠れた声で呟いた土方は、悪戯な手を口元に持っていき唇を押し当てる。
「なっ……！」
ぎょっと目を見開き、慌てて手を離そうとするが逆にぐっと引き寄せられ、間近に土方の顔が迫りうろうろと視線をさ迷わせる。
「あ、あの…」
「まだ、起きるには早ぇだろ。」
斎藤の細い腰に手を回し、目を閉じて、また眠りについてしまった。
「………。」
土方を起こす事もできず、頬赤く染めながら、そっと土方の胸に顔を埋め目を閉じた。
戸惑いながらも、この時が少しでも続く事を願って…
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