願わくば貴方が幸せであることを【43】

今後の対策を練り、その場は解散となった。


美咲も総司も、土方さんの案には渋い顔をしたが結局、それ以外に手はないって事で納得したようだ。


犯人が確定できない以上、おびき出すしかない。


ただ、おびき出すには囮が必要になる。


囮=俺

なので皆、その点に複雑なようで、それぞれ顔をしかめていた。


案を出した土方自身もそればかりは気がすすまないようで、


「嫌なら、はっきりと言っていいぞ。正直、こんな事をさせたくはねぇ…。」


むすりと顔をしかめたまま深々と溜め息をついていた。







「…本当にいいのか?」

駐車場から家までを並んで歩いていたら、土方の心配そうな声が聞こえた。


「はい。いつまでも皆に迷惑をかけたくありませんし…何より、守られてばかりは性に合いません。」


しっかりと土方を見つめ、きっぱり言い放つ。



「それに、別に刀で狙われるほどの危険性はありませんし…囮などは、何度か任務で経験があります。だから、心配はいりません。」

あの頃と違って命懸けというわけでもない。

確かに、知らぬうちに写真を撮られてるのは気味が悪いが、それほど皆が、俺に気遣う必要はないと思うのだが…。



そう土方さんに告げると、今日1番だといえるのではないかと思うほど、深々と眉間に皴をつくり溜め息をついた。



「土方先生…?」


「斎藤…俺が初めてお前を送った日の事、覚えてるか?」


「はぁ…覚えていますが。」


一体、何の事だろうか。


「車ん中で、さんっざん言ったよな。¨女だって自覚しろ¨って。体で教えたはずだが。」


「……!!」


あの時、力強く土方さんに押さえ付けられた事を思い出し、カァッと赤くなり顔が見れなくてパッと俯く。


「お前が…大丈夫だっていうのも分からなくわねぇ。今でも、そこらの奴が…総司達以外の奴らが勝てねぇくらいの腕前なのも知ってる。でも¨もしも¨や¨何か¨がないとも言い切れねぇだろ。」


困ったように笑みを浮かべながら、斎藤の頭をポンポンと撫でる。

「…………。」


「あとな、俺がお前を守りてぇんだ。」


ぐっと斎藤を引き寄せ抱きしめると、耳元で何よりも強く心にある想いを告げる。


「…土方さん…?」


土方の腕の中で赤い顔のまま、パッと顔をあげ土方を見上げる。


そんな風にいわれると、まるで特別だと言われてるようで勘違いしそうになる。

土方さんはきっと、昔からの仲間程度でしかないだろうに…。


自分の考えに落ち込むでしまった。


「あー…斎藤、別に昔からの仲間だからとかいう理由じゃねぇからな。」


「……では、どういう?」


首を傾げ土方さんを見ると、呆れたような顔で俺の頭を撫でると、「あー、だよなぁ…斎藤だもんなぁ。」
と、ポツリと力無く呟いた。



一体、どういう意味だろうか。



「あのな、いくら仲間だろうが守りたいなんって抱きしめたりしねぇよ。そんな理由なら、新八とかにもしなきゃなんねぇだろうが…気持ち悪りぃ」


それは確かに…。
俺も、アイツらを抱きしめたりするのは、ちょっと…想像すると気持ち悪い。


「それに、お前以外を抱きしめたりしねぇよ、俺は…。」


気まずそうに、髪をかきあげながら斎藤をまっすぐに見つめる。



「え、あ…その…」


自惚れてしまいそうだ。頬を赤く染め俯くと、もじもじと鞄を持つ手を弄る。


「とりあえず、ストーカーの件が片付いたら答えを聞かせてくれりゃぁいい。それまで、宿題な。」

苦笑を浮かべると、俯いている斎藤の頭を優しく撫でる。


「……はい。」



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