願わくば貴方が幸せであることを【42】
「あ…い、やだ…」
ふるふると首を振り、ぎゅっと鞄を抱きしめる。
頑なに鞄を抱きしめる斎藤に、皆が顔を見合わせる。
原因は鞄の中にあるのは分かるが、だからといって無理矢理奪い取るわけにもいかない…。
自然と視線は土方へと向かい、ひっそりと顔を顰め、溜め息をつく。
「斎藤、何かあったら相談しろって言っただろ。一人で抱え込んでねぇで、何があったか教えてくんねぇか。みんな、お前の事を心配してんだ。」
向かいに座る斎藤の頭に手を伸ばし、ポンポンと宥めるように撫でる。
「でも…。」
確かに、この写真は怖い
相談した方がいいのは自分でも分かってる。
ただ気持ちが追いついていかない。
「斎藤…大丈夫だ。何があっても守ってやる。」
土方の優しい声音に、顔をあげると笑みを浮かべていて、それに勇気づけられ、そろそろと鞄からあの封筒を取り出す。
ちなみに周りの三人は、《タラシめ!》と思っていたりいなかったり…。
「これが、朝…机に、入っていて…。」
おずおずと目の前にいる土方に、例の封筒を渡す。
「手紙、にしては厚いな…開けてもいいか?」
「………はい。」
笑みを消し、眉をひそめた土方は封筒の中を確認し、更に厳しく表情を歪めた。
「中身は何なんだ?手紙にしては妙に分厚いが…。」
「…総司、安藤、ここ数日に何か変わったことはなかったか。」
原田の問いには答えず、眉間に皺を深々とつくった表情で二人に聞く。
「さぁ、私は特には…。」
「妙な視線がありましたね。視線だけで姿は確認できませんでしたけど。」
「そうか…。」
二人が肩を竦め首をふったのを確認すると土方は、顎に手をやり肩肘をつく体勢で考え込む。
「土方さん、その封筒の中身なんだっていうんだ。」
「………。」
再度の原田の問いに無言で、机の上に封筒の中に入っている写真を広げる。
「これは…!」
「うわぁ…何ていうか…ね。」
「やだ…これって!」
「…………。」
それぞれの反応に、いたたまれなくなりそっと目を伏せる。
「犯人は、あいつ!?」
ふるふると震える美咲が、グシャリと一つの写真を握り潰し叫ぶ。
「あの男しか、いないんじゃないの?」
肩を竦め、皮肉げに笑う総司に原田は困ったように髪をかきあげ、土方はこめかみに手をやり解すように揉む。
確かに、1番怪しいのはあの男だが…
「確かにあの男子生徒が怪しいが、はっきりとした確信がない。」
深々と溜め息をつくと、きっと目を細める。
「危険だが、現行犯で捕まえるしかねぇな。」
昔、討ち入りの策を講じている時のような表情で、にやりと笑みを浮かべる姿は、¨鬼の副長¨そのままだった。
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