願わくば貴方が幸せであることを【7】
あの後は家族が帰宅し、雪村家も含めた軽い宴会が開かれたため、結局千鶴に今日の事を伝える事が可能になったのは夜遅くになった。
「すまんな、こんな夜遅くに…。」本来なら、明日からは千鶴も学校がある故、控えるべきだとは思うのだが…。
邪魔にならぬ所に家族から貰った祝い品を置き、千鶴の隣に座る。
「いえ、大丈夫ですよ。ふふ、それにしても沢山ありますねー。」
千鶴がくすくす笑いながら眺める先には、家族から贈られた品が山となっていた。
「あぁ…。気持ちは有り難いが、こんなに貰っては申し訳なくなるな。」
溜息を付きつつ、山となった品を眺め苦笑を浮かべる。
父からは、最新の電子辞書
母からは、春物のワンピースなどの服が数着。
姉からは、母に合わせたのだろうサンダルとバッグなど。
兄からは、何故か【痴漢撃退術】とかいう本と、虫よけだとか言って催涙スプレー…薫と似たような事を言って押し付けられた。
雪村のご両親からは、前から欲しかった本を数冊頂いた。
多すぎて、一回では部屋に運べず複数に分けて運ぶ羽目になってしまった。
姉や兄は、年が離れてるせいもあってか可愛がってもらっているし、両親に至ってはだいぶ後に出来た末っ子という事で、かなり甘やかされている自覚もある。
昔は家族の縁が薄かったせいもあり、今の現状は嬉しくもあるが、どうしたらよいのか戸惑う部分もある。
「ふふ、皆さんが朔さん大好きなのが凄くわかりますね!
朔さんの喜ぶ姿が見たかったんだと思います。だから、申し訳ないなんて思っちゃダメですよ。」
一生懸命、訴えてくる様子に頬が緩むのがわかった。
「あぁ。嬉しいが、どうしたらいいか戸惑っていたんだ…だが千鶴の言う通りだと思う。頂いた品は有り難く使わせていただく。」
「はい。あ、すみません、差し出がましい事を…。」
「いや、かまわない。実際、気持ちに整理をつけることができた。」
ありがとう…そう言って千鶴の頭を撫でると、にこりと笑みを浮かべた。
それを、今から泣かせてしまうかもしれないと思うと、話すのは気が重くなる。
しかし、いずれは千鶴も知る事である。それに、表には出さぬようにしているが…千鶴が、佐之に会いたいと願っているのを知っている。
今、この時代に生きて…近くにいるというだけでも伝える価値はあるのかもしれん。
「千鶴、今日…総司に会った。」
「…えっ!?」
驚き、大きな目を更に見開く千鶴。そして意味を理解したのか、みるみる嬉しそうな表情を浮かべた。
「同じクラスになった。それに…総司には記憶がある。」
「わっ、本当ですか!?お変わりありませんでした?」
嬉しそうに笑いながら、勢い込みながら訪ねてくる。からかわれたりと必要以上に総司に弄られていた彼女だが、あの頃から仲は良かった。そんな総司との再会は、千鶴としても、とても嬉しいのだろう。
「あぁ。何一つ変わってなかったな。あの意地の悪さも健在だ。」
「…そこは変わってて欲しかったような気がします。」
「だが、それでは総司ではなかろう。」
「あっ…それもそうですね。」
くすくすと楽しそうに笑う、千鶴。
「総司には、あんたの事も伝えてある。驚いていたが、喜んでいた。近い内に会うだろう。」
「はい!楽しみです!」
「イジメられぬと良いな。」
くすりと笑い、千鶴の方を見ると頬をプクリと膨らませ「ヒドイです。」と拗ねていた。
「ふっ、大丈夫だ。また、危なくなったら助ける。」
「絶対ですよ!約束です!」
「あぁ、わかった。」
あまりの必死さに、笑いが込み上げてきて、二人共ついつい吹き出してしまった。
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