願わくば貴方が幸せであることを【5】
久しぶりに目にした貴方の姿に、涙が零れそうになりました。
艶やかな髪に、涼しげな目…相変わらず口調は悪いみたいだが、それすらも魅力的に見せる。
必死に奥から溢れ出てきそうな、ナニかを押さえ込む。
「あー、入学おめでとう。 お前らの担任の土方歳三だ。くれぐれも問題は起こしてくれんなよ。」
黒板の前で、口角を上げにやりと笑いながら話す土方さんに、式が終わり緊張も解れたのか《はーい》と明るい返事を返す。
「今日は、これで終わりだ。気をつけて帰れよ。」
「一君。」
席を立ち、帰ろうとしたところに総司がやってきた。
出席番号順で座っているため、総司とは微妙に席が離れている。
「なんだ?」
「うん、このあと暇かなぁって」
カバンを持ち、にこにこ笑う総司とは久々の再会だし、もう少し話したいとは思う、が
「すまん。今日は、すぐ帰るように言われている。」
入学祝いをするから終わったら、すぐに帰ってくるよう、朝に散々言われてきてしまったし、家族の気持ちも無下にはできん。
「そっかぁ、残念。」
「すまん。千鶴にも合わせたいし、家に招いても良いのだが…総司にとっては居づらいと思う。」
「あはは、いいよ。気にしなくて。千鶴ちゃんには会いたいけど、さすがに今日いきなり家にお邪魔するほど野暮じゃないしね(笑)」
「千鶴には、後日会わせよう。あまりイジメるなよ。」
くつりと笑い、帰ろうと二人で下駄箱まで向かう。
「ひどいなぁ。僕が千鶴ちゃんをイジメるわけないじゃない。」
「……そうか。」
「じゃぁ、また明日ね。」
「あぁ。」
-また明日-
なんて事のない言葉に、安堵と嬉しさが込み上げてきた。
また、毎日の様に会えるのだ。総司にも…そして土方さんにも。
例え、土方さんに記憶がなくてもいい。ただ、会えれば…貴方が笑っている姿が見ることができるのなら…
それでいい。
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