願わくば貴方が幸せであることを【3】
明るい茶色の髪に、三日月形になっている口元…にこやかに笑ってる様に見えて相手を観察する眼差し。以前と変わらぬ姿が、すぐ目の前にいる。


「そ、総司…。」


頭が上手く働かず、ただ掠れた声で名前を紡いでいた。


「はは、まるで幽霊でも見たような反応だね。まぁ、仕方ないのかな。久しぶりだね、一君。」


目の前の男、沖田総司は先ほどとは違う…おそらくは本当の笑顔を見せた。



「あ、ああ。」

「にしても、昔とあんま変わってないよね一君。まぁ、ある一部分は大きく変わっちゃってるけど。実は、半信半疑だったんだよね〜。まさか女の子になってるとは思わなかったよ。」


ケタケタ笑い声をあげる総司。

「…そういうあんたは変わってないな。」



あえて触れて欲しくなかった部分を、あっさりと告げられ溜め息をつく。だが、それが沖田総司だと思うと懐かしい気持ちになる。


「まあね。でも、一君に記憶があって良かったよ。」

「それは、こちらも同じだ。千鶴も、この事を知れば喜ぶだろう。」

「千鶴ちゃん?」

「あぁ。今は千鶴とは幼なじみという関係だ。千鶴も記憶がある故…。」


「へぇ、そうなんだ。…一君はさ、僕や千鶴ちゃん以外には会ってないよね?」



先ほどとはうってかわり、総司は笑みを消し真面目な顔で尋ねてきた。


「ああ。」

それがどうしたと首を傾げると、総司はどこか苦しげな表情を浮かべた。


「近藤さんや土方さん達も、今の時代を生きてる。でも…僕と一君、千鶴ちゃんもだね…僕達3人以外には前世の記憶はないよ。」






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