プロポーズ
だんだんと寒さがましてきた、初冬の土曜。
朔は、土方の家に泊まりに来ていた。
「悪いな、朔。せっかく来てくれたってのに…。」
眉間に皺を作り、見ていた書類から目を離し、後ろのソファにちょこんと座っている斎藤を眺め、頬を緩める。
「いえ、お仕事ですから仕方ありません。あの…お邪魔でしたら、今日はお暇させていただきますが…?」
そうは言っているが、悲しげに目は伏せられ、膝上に丁寧に置かれている両手はきつく握られている。
土方は、書類を置き斎藤の座るソファに向かい隣に座ると、肩を抱き寄せる。
「邪魔なわけねぇだろ。仕事なんか、すぐに終わらせる。だから、お前は待っててくれ。お前が帰っちまったら、淋しいだろ…。」
「でも…んっ…」
引き寄せられるように、斎藤の白い首筋に唇を滑らせる。
「ひ、土方…さん…」
顔を紅くし、腕の中でビクリと震える斎藤があまりにも可愛らしくも艶めいていて、ついつい手があらぬところに伸びてしまいそうになる。
「朔…頼む。」
「は、い…。」
耳元で囁くと、擽ったそうにふるりと肩をすくませる。
「あの…待っている間、夕飯を作っても良いでしょうか?」
おずおずと、こちらを伺いながら言われた申し出が、何とも健気なもので、思わず頬が緩む。
「あぁ…頼む。」
「はい。」
ゆっくりと体を離すと、キッチンへと向かう背中を見送る。
「あのままだったら、危なかったな。」
一人苦く笑うと、また書類との格闘を始めるのであった。
-コンコン
やっと一仕事終えた頃に、小さなノックの音が聞こえた。
「入っていいぞ。」
そう声をかけ、後ろを振り返ると、躊躇いがちにゆっくりとドアが開かれた。
「失礼します。あの、夕飯ができましたが…。」
「あぁ、すぐ行く。」
「お邪魔してしまいましたか?」
部屋を出ると、斎藤が不安げに見つめてきた。
「いや、ちょうど終わったところだったから、気にするな。」
そう言って、頭を撫でてやるとホッとしたように微笑んだ。
テーブルには、煮魚と酢の物、肉じゃが等といった和食が綺麗に並んでいた。
「お口に合うかわかりませんが…。」
緊張したように、こちらを見てくる斎藤に、くつりと笑うと箸を持ち煮魚から口に運ぶ。
「美味い…。」
口の中に広がる上品な味に、自然と笑みが浮かぶのがわかった。
「…良かった。」
僅かに頬を紅潮させたまま、にこりと微笑んだ。
「これなら、いつでも嫁にいけるだろーよ。」
「え…あ…///」
ボッと音が出たように、顔を真っ赤にし俯いてしまった斎藤に、トドメとばかりに言葉を紡ぐ。
「俺んとこに、嫁に来てくれるか…朔?」
じっと動かない、斎藤の腕を掴み抱き寄せると《答えは?》とニヤリと笑い、問い掛ける。
「は…は、い。」
あの頃、手に入れる事ができなかったもの
何よりも愛しい存在からの答えに、嬉しさのあまりキツク抱きしめるのだった。
End
さくら様リクエスト
長編番外編で斎藤さんの手料理を食べさせるって事でしたが…なんか、土方さんがエロくなってしまった(^-^;
思いっきり、健全なリクエストから何故、エロさが出てしまったのか謎。
- 13 -
戻る