はじめ君の災難【土方編】

その日、土方はいつものように夜遅くまで仕事をし朝餉までの僅かな睡眠を貪っていた。


しかし、その僅かな眠りも、ある人物によって妨げられる事になったのだった。



【はじめ君の災難/土方編】



「…これは一体どうしたってぇんだ。」


目の前の人物を眺め、深々と溜息を付き頭を抱える土方は疲れていた。昨日も夜遅くまで山の様にある仕事を片付け、やっと気持ち良く眠りについた…なのに朝っぱらから、こんな厄介事が舞い込んでこようとは…。


「もうしわけありません、ふくちょう。」


目の前…ちょこんと座る、幼い子供の姿をした斎藤に、可愛いなと現実逃避をしてみる。


「あー…朝、起きたら既にその姿だったんだな。」


「はい。とりあえず、ふくちょうにほうこくをとおもい、ちづるにつれてきてもらいました。」


朝、いきなり千鶴が縮んだ斎藤を抱いて現れたのには驚きを通りこして唖然とした。


そして事情を説明した後、千鶴は台所に戻ったわけだが…。


「なんか、心当たりはあるか?」


「…。」


ふるふると首を横に振る、斎藤。

ずるっ


首を振ったせいか、体に巻き付けていただけの状態だった着物がズレ、上半身が丸見えになってしまった。


「………。」


「あ、も、もうしわけありません!」

慌てて、着物を引っ張り隠そうとするが小さい手で、更に慌てているのもあり、中々上手くいかない。
みるみると、斎藤の目に涙が溢れてきて、流石の土方もギョッとした。


あの斎藤が、夜の営み以外で涙を流す姿など見たことがない。


慌てて、着物を直してやり膝上に抱き上げる。


「ふぇ…ふく、ちょ。」

ぽろぽろと涙を零しながら、ぎゅっと衿元を握り締め胸に顔を擦り寄せてくる、その姿は破壊力絶大であった。


「泣くな、一。」

抱きしめ、柔らかな青みがかった黒髪に優しく口づけを落とすと、頬に流れる涙を拭ってやる。

「っ…。」


「何が原因か調べ、ちゃんと元に戻してやる。だから泣くな。」


「は、はい…。」


土方の言葉に安心したのか、斎藤はとても可愛らしいはにかんだ笑みを浮かべるのであった。




千鶴が呼びに来るまでの、数刻


二人は思う存分、いちゃつくのであった。





つづく?
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