神なんて!【9】
「一姉ちゃん、千鶴のこと苦手?」
千鶴を送り届けた帰り道、思い切ってそう聞いてみれば斎藤は目を見開き固まった。少し直球過ぎたか?でも、回りくどいの面倒だしなー。
「いや…雪村はいい子だと思うが…。正直最初はトシ目当てで通っているのかと思ったが、そうでもないようだし…。」
歯切れ悪くそう語る斎藤に内心「でも苦手だと。」と思った。うーん、あの頃は普通に雑談とかもしていたし、そんな感じしなかったんだがな。性別が変わったから考えも変わったのか?よくわからん。
「トシの彼女なのに、すまない。」
「いや、だから彼女じゃないって。」
ほんと、申し訳なさそうな顔で謝る斎藤だけど、彼女じゃないから!!そこ勘違いしないで!と強く主張すると斎藤はきょとんとした顔で「そうなのか?」と首を傾げた。可愛いけど違うから!
「だが、トシが女の子で名前を呼ばせてるのも呼ぶのも珍しいし、2人独特の空気が流れているから…」
うん、中身が大人なのに小学生同士ってだけだし、前世からの付き合いだから仕方ないと思う。でも、そんなの斎藤は知らねぇからなー。
「千鶴とは仲のいい友達だよ。それにお互い別に好きなやつがいるから。」
「そ、そうなのか…。」
「そっ、でもみんな誤解するんだよなー。俺らはただ、仲間なんだけどな。」
前世の記憶がある仲間って稀少なんだ。素でいられるってのは楽でいいしな。
「仲間…?」
首を傾げる斎藤に苦笑すると「そ、叶いっこない恋をしてる同士、気が合うんだ。」と肩を竦めた。その言いざまが気になったのか斎藤は眉を潜め「何故叶いっこないなんて決めつけるんだ。」と聞いてきた。
「相手にされてねぇの。仕方ねぇけどさ。」
その響きが妙に寂しげだったのは仕方ないことだろう。土方は俯き、小石を蹴飛ばした。
「トシ…。」
「相手に恋人が出来て、自分じゃねぇ奴と結婚しても、笑って祝福してやりてぇなって…千鶴ともさ、言っててさ。」
まだ、その覚悟出来てねぇけど、いつかそう出来ればいい。笑って祝福して、そして距離をとればいつか忘れられるんじゃないか、そう思う。そんな事を考えてたら、そっと体が温もりに包まれた。驚きに顔を上げると斎藤に抱きしめられている自分がいた。
「一姉ちゃん?」
「…そんなに好きなのか。」
静かな斎藤の言葉にパチリと瞬くと、土方は「まぁ、な。」と頷いた。何せ前世からの片思いだ。年季も入ってる。苦く笑うと「ごめん、一姉ちゃん。変な空気にして。」と言って、そっと離れた。
「トシ…。」
「さ、早く帰ろう。」
笑って見せ歩き出すと、斎藤は何も言わずに後に続いた。
本当は自分以外のやつの隣に立つ男の姿を見たくない。
その前に距離をとるべきかな、なんて考えながら家路へ歩いた。
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