神なんて!【7】


「なぁなぁ、トシは雪村さんと付き合ってんの?」


千鶴が転校してきて1週間ほどたった頃、友人の1人がそう聞いてきた。正直お前もか…ってなるけど、仕方ない。道場の奴らや斎藤にも否定したのに誤解されたままだ。


「いや、付き合ってねぇよ。昔からの友達ってとこ。」


「嘘、マジかよ。俺、てっきり2人は付き合ってんのかと思ってた。」


その言葉に周りにいたヤツらも「俺もー」と声を上げた。女子の方からも「うそー」という声が聞こえたが、盗み聞きかよ。


「トシ他の女子とかは苗字で呼ぶのに雪村さんだけは名前で呼ぶから、てっきりそうだと思ったのになー」


「「なぁー」」


「今更苗字で呼ぶ方が何か気恥しいじゃん。」


そういうと友人達はそういうもんかーと納得していたが。一体どこまでその誤解は広まっているんだ。溜め息を1つ零すと、友人達の中でも落ち着いてる前野がこそりと「気をつけた方がいいよ。」と言ってきた。あまりの声の小ささと他の友人達はもう違う方に注意が向いていたお陰か土方しか聞こえなかったようだ。土方も声をひそめ「どういうことだ。」と聞き返した。



前野はチラリと女子の方を見遣ると、「何か女子の間で雪村さんをハブろうとしてるみたいだから。」と告げた。マジか…全然気づかなかった。眉をひそめていると前野が更に「何か、土方くんと仲良いのが気に入らないって松本さん達が。」と語った。ああ、前に代理で告白した中のリーダー的存在の…。



「サンキュ、前野。」


「うん。クラスの雰囲気悪くなるのやだし、雪村さんが可哀想だからねー。」



□□□□□



千鶴と道場に向かっている途中、前野に言われた事を思い出した。千鶴の様子は至って変わらないが、もう何らかの事を言われてたりするかもしれない。



「なぁ、転校してきて1週間経つけど友達とか出来たか?」


その問いかけが意外だったのか、千鶴はきょとんとした顔をした後くすくすと笑い「トシくん、お父さんと同じ事言ってる」と言った。



「うるせぇ、お前ほとんど俺と行動してるから、ちゃんと友達出来たか心配になったんだよ」



「ふふ、すみません。うーんと、前野くんと吉田くんとかは良く話し掛けてくれます。」



男かよ。というツッコミはいれないでおく。そもそも行動がオレと一緒だからな、女子と話す機会が少なかったかもしれない。反省していると、千鶴が困ったような顔で「それにしてもトシくんは本当にモテるんですねー」と言った。



「…何か言われたか」



「…まぁ。どんな関係なの?とかですけど。」


友達って言ってもあまり信じてもらえなくて…と言う千鶴に、ああもうお前もかという気持ちで頭が痛い。



「…どうしたらいいんだろうな。」



「はい…。」



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