神なんて!【5】

新学期


子供は風の子なんて誰が言ったと心の中で毒づきながら、登校すればクラスメイト達の賑やかな声に迎えられた。


「おはよー、トシ!聞いたか?転校生が来るらしいぜ」


「マジかよ。」


6年のこんな時期に転校なんて、珍しいなと思いながら友人達の「男かな、女子かな。女子なら可愛い子がいいな」という言葉に苦笑する。いくつでも男の関心はそこにいくのか。


そうこうしている内にチャイムがなり、先生が入ってきた。



「皆さん、おはようございます。冬休み明け皆さんが元気に登校してくれて先生は嬉しいです。早速ですが、今日から新しいお友達が仲間入りします。仲良くして下さいね。じゃぁ、入って下さい。」



朗らかに笑う歳三の担任は、ふくよかな中年の女性で、まさにお母さんって感じの人だ。先生に促され恥ずかしそうに教室に入ってきた子に土方は目を丸くし、思わず立ち上がり「千鶴」と声を上げてしまった。


やってしまった。
教室中の視線が集まるのが分かる。ヤバい、どうする?そもそも雪村に記憶がなかったら、あっちも困るだろう。固まる歳三だったが、「あら、土方くん雪村さんとお知り合いだったの」と先生に言われ、どう答えるべきか言葉を見つけられない。何せ今の世で会うのは初めてなのだ。


「えっと、土方さん…土方くんとは昔会ったことがあるんです。」


「あら、そうだったの。なら、雪村さんがこの学校に慣れるまで土方くんにお世話をお願いしようかしら。」



「は、はい。」


この反応は記憶があるって事だなと歳三は更に驚いた。何せ初めての記憶持ちなのだ。今更ながら席に着くと、驚きにバクバクいう心臓を押さえながら雪村を見る。


「じゃぁ、改めて紹介するわね。雪村千鶴さんです。みんな仲良くして下さいね。」


「雪村千鶴です。よろしくお願いします。」


ぺこりとお辞儀をする雪村に、クラスメイト達は拍手を送った。




□□□□□


「お久しぶりです。土方さん。」


昼休み学校を案内するという名目で中庭へと連れ出すと千鶴は、にこりと笑い挨拶してきた。


「ああ。記憶…あるんだな。」



「はい。」


「そうか。お前の他には記憶があるやつはいたか?」


「いえ。お千ちゃん、君菊さんには会いましたが二人とも記憶はありませんでした。」



寂しそうに笑う千鶴に土方はやっぱりなと溜め息をつく。そもそも覚えてる方がおかしいのだ。


「こっちもだ。幹部連中は揃ってるが全員記憶がないうえ、ほとんどが高校生だ。」



「そう、ですか。何だか寂しいですね。」



しょんぼりと項垂れる千鶴に苦笑すると、慰めるように頭を撫でてやった。


「お前は、今も親父さんと2人暮らしか。」



「はい。薫…双子の兄は母と暮らしてるので。」



「悪い、込み入ったことを聞いたな。」


「いえ、大丈夫です。」


何でも両親が離婚し、千鶴は父親の雪村綱道に双子の兄は母親に引き取られる事になったらしい。その事もあって寂しかったのだが、「土方さんに会えましたし、皆さんがお元気にされてるってことなので、もう大丈夫です!」と笑っていた。


「馬鹿、ガキが強がってんじゃねぇよ。」


「強がってません!」


「…今日、放課後暇か?」


丁度、道場に行くからどうだと聞くと、元気な「行きます」との返事を貰った。


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