神なんて!【4】
当然だが、何の進展もないまま冬を迎えた。あと数日で年も越そうというある日、歳三は斎藤の家にいた。小学生の歳三は勿論冬休みだが、大人はそうもいかず両親は仕事でいなく、年の離れた兄と姉は友人と約束があるということで、家にはいない。別にもう1人で留守番も出来るのだが、心配性で過保護な両親が斎藤に歳三を預けたのが、理由だった。暖かい部屋で冬休みの宿題を解きながら、歳三は出そうになった溜め息を飲み込む。当然ながら、斎藤も同じ部屋で課題をやっているのだ、変に気にされたらまずい。しかし、こうも無防備でいられると、本当に自分は隣の家の子供としか思われてねぇんだなと実感させられるというか、何というか。いや、小学生を意識しろっていうのは無理があるっていうのは分かっている。分かってはいるが複雑な男心。
「はぁ…」
聞こえてきた溜息に顔を上げると、斎藤と目が合った。
「一姉ちゃん、何かあった?」
「いや、1つ問題で分からないのがあって…」
何か隠してるような感じだったが、追求するのもなと思い問い詰めるのもやめた。
「そういえば、一姉ちゃんもうすぐ誕生日だよな。プレゼント何がいい?」
「…トシのその気持ちだけで十分だけど…そうだな…一緒に初詣行かないか。」
うっすらと微笑みながら「ダメだろうか?」と首を傾げる斎藤に歳三は内心可愛いなこんちくしょうと思いながら「いいけど…それでいいのか?」と聞いた。そんなんなら、いつでも付き合うわと相変わらず無欲な斎藤に苦笑した。
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元旦
「あけましておめでとう。今年もよろしく。」
「あけましておめでとう。今年もよろしく。そして、誕生日おめでとう。」
10時に待ち合わせた2人は共に挨拶を済ませると仲良く薄桜神社へと向かった。薄桜神社は隣駅にある神社で、女子の間では縁結びの神様と有名らしい。斎藤の事だから意図はないのだろうが…。
あれか。好きな人がいるって言ってたから、それの願掛けだったりするのか。
そう思うと目が据わってくるのが分かる。斎藤には幸せになってもらいたい。しかし、隣に立つのが自分以外の男を想像すると腹が立つ。幸せになるならと割り切れるほど、まだ人間出来ていない。
そうこうしている内に薄桜神社についたが、初詣の人混みがすごい。油断するとはぐれかねない。残念ながら歳三の小学校ではスマホや携帯は基本NGとされていて、所持していない。なので、はぐれたら終わりだ。そう思っていたら斎藤に手を繋がれた。
「はぐれたら大変だからな。」
「あ、ああ…。」
分かっちゃいるが、動揺してしまったのが悔しい。
そして、周りの微笑ましそうな視線が仲の良い姉弟にでもみえてるんだろうなーと思うと仕方ないにしても、複雑だ。斎藤もそれくらいの感情でしかないだろうし、手を繋げたのは嬉しいが新年そうそう暗い気持ちになったのだった。
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